はじめての宝物8


一目では、状況の判断が難しかった。
明らかに説明がつかない。
あの両断された賊の死体はソニックがやったのか?
それとも。

「……ようやく来たか」

工房は半壊していて、武器があちこちに散乱している。
地面に突き刺さる、あの刀。
他にも地面に突き刺さっているものはあっても、すぐにわかる。
ソニックも。
そこらのゴロツキごときにはやられないだろうと思っていたが、案の定だ。
ソニックは無傷で、つまらなそうにしていた。

「お父さんは!!?」
「おー、ここだここだ」
「お父さん!?」

倒れた木の下敷きになっている、ように見えるが、正確には挟まっているだけのようだ。
へらへらと手を振っている。

「お父さん!!」

女の子は鍛冶屋さんへ駆け寄り、ソニックもゆっくり近づいていく。
私はそれを目で追うだけ。
動けない。
嫌に静かだ。
すべての動きがゆっくりに見える。
なんだろう。
さっきから。
胸騒ぎが。
違う。
見なければいけないのはこっちじゃない。
向かうべきなのは、こちらではなくて。

「っ、ソニック!!」

叫ぶ名前は、それしかない。
この頃の私はそうだった。
名前を聞かないのは、本当は興味がなくて、大して気にかけていないからだ。
そんなこと、この時は思いもしなかったけれど。
状況を確認するよりも早く、私は飛び出していた。
ソニックが危ない。
それだけだ。
十分だ。

「なまえ……!!?」

呼んでくれる声も、それだけ。
家族からはもう、なんと呼ばれていたのかも忘れた。
なまえも忘れるところだったけれど、忘れる前に、ソニックが来てくれた。

「……」

怪我はないか聞きたいけれど。
うまく声が出ない。

「ははははははは! ざまあねえな! 最強の忍者さんよ!!」
「貴様よくも……!!」

一人残っていたようだ。
しかも、厄介な能力を持っている。

「別にそんなもんに頼らなくても、そーいや、俺、強いんだった……」

ふわり、と近くにあった刀が浮く。
超能力だ。
見るのははじめてだ。
つまり、そのへんに転がっていた刀を浮かせて、こちらへ向けた。私がそれを受けたので見えはしないが、背中に何本か刺さっているのだろう。
痛いわけだ。
私は一番近くに刺さっていた刀を手にしてどうにか立つ。
支えられていては迷惑になると思ったのか、戦おうと思ったのかは覚えていない。

「なまえちゃん!」

鍛冶屋さんと娘さんの声。
ゆらり、と前に倒れる。
地面に赤色が広がっているのは、これは、私の血であるらしい。
体がうまく動かないわけだ。

「待っていろ、すぐに手当してやる」

ソニックの声は私に向けられていたようだ。
あまり良く聞こえない。
痛みがうるさい。
ずきずきと、こんな怪我をするのも久しぶり。

「女に庇われて、なあ」

笑っている。
強いというよりは、油断できない相手だ。
守れたのはいいが、傷を負ったのは間違いだった。

「なまえ」

ちらりと、ソニックがこちらを見た、その一瞬。
その体は、ソニックのものではなくなった。
超能力により自由を奪われ、武器を握る手が開いていく。
やがて、からん、と刀が落ちた。

「あーあ。ほんと、ざまあないって感じ?」

このままではいけない。
このまま、では。

「ん……?」
「おい、なまえ、なにしてる……!!? よせ!!」

絶対に、守る。


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20160311:話が切れるのはソニック編も書く予定だからです。
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