57 ジェノス君について


テレビを見ると、怪人のニュース以外にも、三股をしていた女性が恨みを買って殺された、なんてニュースもやっている。ちょっとタイムリーすぎて嫌だが、嫌でも考えてしまう。
例えば、ばれなければ、みんな幸せだったのだろうか?
少なくとも、他の男性は幸せだったのかもしれない。
でも、どうなのだろう。そういうのを楽しめる女性なら、女性側も幸せだろうが。
私はと言えば、きっと罪悪感とかそういうので吐き続ける日々を送るだろう。
例えばジェノスくんのあれだけまっすぐな想いを聞いて、誰とも知らない男の人に恋人のふりを頼んで、諦めてもらうなんてこと、できそうもなかった。
やはり、まっすぐなものにはまっすぐに返したい。
だめならば、だめだったと。
よいのならば、よいのだと。
はっきりしなかったのは、私の弱さ。
適当にしていれば諦めてくれるだろうと楽観していた。あげくほだされてこちらが好きになっていては、お話にならない。
ただでさえ答えにくいものが、もっと答えにくくなっている。

「選ぶ、か」

心底、とんでもない話だ。
むり、と言いそうになるのをどうにか堪える。
むり、じゃない。
むりじゃない。
無理ではない。
ガロウくんは、何か基準がないと、と言ったし、私の好みのタイプを暴きだしてくれたけれど。
何か、基準、と言うのはこれまた難しい話だった。
ただ、サイタマさん、ジェノスくん、と彼らの想いに深く深く触れてわかりかけている気はする。
触れて、わかるたびに、半端ではいられないと覚悟をし直すのは毎日のことだ。
思うのは、やはり、そんな風に言ってくれるのならば私も幸せにしたい。
料理をおいしいと言ってくれたら嬉しいし、世界で一番癒せる場所を作ってあげたい。
かわいくあれたらいいし、心配をかけたくない。
強くありたいし、私も守れたら良い。
そんな気持ちが愛だろうか。
では、恋は?
そりゃあ、いろいろな意味でどきどきすることはあるけれど。
恋に落ちるっていうのは。

「まだ時間が、かかるのかなあ」

それとも案外、すんなりわかったりするんだろうか。
うーーーん。
ジェノスくんは、いろいろやりたいことがあるみたいだった。
彼と一緒に行ったのなら、私は彼の願いをできるだけ聞こうと思うのだろうし、彼は私も楽しめるようにとずれたりずれなかったりという感じに気を遣ってくれるのだろう。
料理も勉強したり、私より女子力が上がってしまうかもしれない。
やっぱり、幸せ、なのだろう。
というか、一緒にいられないと思ったのなら、そもそもこんなに仲良くなっていない。
一緒には居られるのだ、誰とでも。
ただ私は選ばなければならない。
選ぶ。
私は私の中に燻っている熱を確かに感じている。
私はそもそも何を選ぶんだろう。
ああ、私がこれから恋人に、恋人か。
恋人というからには、デートをしたり、一緒にいたり、手を繋いだりキスをしたり、それ以上の事をしたりするわけだろう。
そういうことがしたいひと、とか?
いや、そんなの。
すっとばして手を繋いだりしてしまっているけれど。
更に言えばそれ以前に、ソニックとは保護者や友人というよりまるで恋人のような関係だったわけで。
やっぱりそれはおかしかったんだろうか。
いや、おかしくなったのは、私が意識しはじめたから、か?
ソニック以外の人に温かくてどうしようもない気持ちを向けられて、答えなければならなくなって、それがなければ、あのまま。
サイタマさんやジェノスくんがいなければ、ソニックの抱えて来たものにも気付かなかったわけだ。
それは、残念、だなあ。
気付けてよかった。
きっとまだ、至らないところもたくさんあるけど。
でも、はっきりさせにいくのだ。
これから。
ソニックに会うのは随分久しぶりな気がした。
きっと気を遣ってくれているのだろう。
一緒にいると、きっと甘やかしてほしくなってしまうし、たぶん、そうしてくれるだろうから。
それは、だめ、だ。

「がんばろ」

久しぶりに、ソニックに会う。


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20160220:大丈夫か? この連載は面白いのか?
 
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