46 一緒に遊ぼう(サイタマ編)1


それからしばらく、私はなんと言ってサイタマさんを連れ出したものか悩んでいた。
これが、彼らがいつも考えていたことだろうか。
楽しいような恥ずかしいような。
遠出はきっとできないだろう、あの人が金欠なのは知っているし、なにか大きな事件を片付けた後だと言っていた。
ガロウくんとは連絡が取れなくなっていて、助言を賜ることもできない。
もう十分、背中を押してもらったから。
そのうちひょっこり元気な姿が見られたらいい。
ともかく、今はサイタマさんだ。
また散歩でもいいけれど、なんというかもっと、普段じゃあ知ることのできないような。
そんなこと、が。
しかし、考えはまとまらないままサイタマさんの家に着いてしまった。

「こんにちは」
「おう」
「ジェノスくんは外出中ですか?」
「博士んとこ。メンテだってさ」
「ところでなんですがサイタマさん」
「ん?」
「今日どこか、行きたいところとかありませんか?」
「いや? 特にないけど」
「そうですか……」

どうしたものか。
ノープランできたのがいけなかったかもしれない。

「えーっと、遊びに来てくれたんだよな?」
「あ、はい」
「そしたらさ、ゲームやろうぜ。あの時は結局戦えなかったわけだし」
「え」
「え、嫌なの?」
「いや、でも、ゲームしたら」
「いいって。せっかくなら楽しんでってくれよ」
「……、私、負けませんよ?」
「おう」

笑顔には安心するが、安心したばっかりに、素直に楽しんでしまっていた。
果たして何時間遊んでいたかわからない。

「だーー! なんで今ので当てられるんだよ! もっかいだ、もっかい!」
「何回でも受けて立ちますよ」
「次は勝つ! まぐれでも勝つ!」
「私に対してまぐれ当たりはありませんから」

得意げな顔をしていたと思う。
サイタマさんは楽しそうだったのを覚えている。

「なあ、そろそろ飯に」
「何言ってるんですか、領地戦行きますよ」
「あ、はい」

ご飯をと言われたのも覚えている。

「サイタマさん、こっちの武器のがいいんじゃないですか? あとパーツ、こうしてみませんか?」
「……」

正気に戻る瞬間は、いつも突然だ。
やりすぎた、と気付いたときにはもう遅い。
ば、と横を見ると、サイタマさんが隣でばったりと死んだように眠っていた。
やってしまった。
気をつけてはいるのだが、楽しいとつい夢中になって周りが見えなくなってしまう。
ジェノスくんが帰って来ているということもないし、そんなに何日もは経っていない、というか、そんなに時間が経っていたか……?
時間を見れば、午前10時を回っていた。
私がここに来たのは午後1時頃だったはずだが。
まさか。
徹夜?
少なくとも一日は経っている。
急いで携帯を見るが、幸いにも日付を跨いだだけだった。
幸いか?
どちらにしても、隣で死んだ様に眠るサイタマさんには悪いことをした。
もうしわけなさすぎる。
なんだこれは。
起こすのはあれ、だろうか。しかしいろいろ勝手に人の家のものをいじるのも……。

「まあ、いい、かな」

そんなことを気にするひとでもない。
もし、こんな時間まで私に付き合っていたのだとしたら、おそらく何も食べていないのだろう。
何か食べやすい朝ご飯でも作っておこう。
ゲームが嫌いにならなきゃいいけど。
できるならまた、遊んでほしいが、難しいかも知れない……。

----
2016/2/4:サイタマさんのターン。
 
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -