43 いつもの公園2


「モテ期ってやつかね?」
「うーーん。今まで全然他人に興味がなくて。最近ようやく人とちゃんと向き合う様になったと思うんだよね。ずっと誰でも良いって思って来たのが、誰を選ぶのか、みたいな話になって困る毎日を送っている感じ。ガロウくんの言う様にモテ期だったとしたなら、一過性のものなのかな」
「どうだろうな。だけどまあ俺なら」
「俺なら?」
「そんな適当な考えのうちに丸め込んで暗示かけて信じ込ませてやるけどな」
「ああ、それは、楽、だね」
「そこで楽とか言っちゃうからだめなんじゃねえの、なまえさんよ」
「その通りかも知れない……」

カラオケに行ってバッティングセンターに行ってついでにゲームセンターでひと遊びした後に、お腹がすいたというのでファミレスで休憩。
高校生、というのは少しだけしていたことがある。
ある任務で潜入して、一ヶ月程度。
その時も大して友達ができたりはしなかったのだが、この遊びのメニューはまるで高校生みたいだなあと思った。ガロウくんは年下であるという話だが、一体いくつなのだろう。

「そうじゃねえってことは、全員本気ってことじゃねえか? で、本気のなまえさんに選んでほしい、と。かーっ、青春してんなー、なまえさん」
「私にはもったいない展開だなあ……」
「で、なまえさんはそれがわかるから下手に動けないんだろ。苦手そうだもんな、そういうの」
「いやー、その、何しても何言っても困るわけだから、ゆっくりやってこうとは思ってるんだけど」
「だーかーらー、その受け身がやる気ねえって言ってんだろ」
「やる気ない、かな。はじめて言われた。みんなゆっくりでいいって言ってくれてたけど、それについてはどう見ますかガロウ先生」
「そりゃ言うだろうよ。早くしろ、なんて言って必ずしも自分が選ばれるとは限らねえわけだから」
「と、言うと?」
「今が一番、なまえさんに近づいていられるってわけ。誰か選んだら、なまえさんはそいつのもんなわけだし、なまえさんも選ばなかった奴を今ほど構ったりしなくなるだろ」
「そう、かな?」
「そうだろ。要は全員怖がってんだよ、なまえさんが好きだから、選ばれたいけど、選んでほしくないのさ」
「はー、ガロウくんってすごいんだねえ」
「あんたが疎すぎるだけだろ……」
「そうかもね。私は自分のことばっかりで、ただなんとなく、その気がないなら、普通に、できればあんまり関わらないようになんて思ってたけど、結局仲良くなってしまったし。なんとなく隠していたこともなくなってしまったし、ここからどうしようかなって」
「なるほどねえ。今からどうするか、か」
「うん。ガロウくんならどうする?」

私はドリンクバーでもらってきた野菜ジュースを飲みながら待つ。
ガロウくんはどうにも目立つけれど、悪い人、という感じではなかった。
そしてやたらとヒーローと、怪人というくくりにこだわりがあるようで、ヒーローというものがあまり好きではないようだった。
幼馴染みが同じ忍者であることは言ったが、他二人についてはヒーローであるということは伏せて、極力情報を出さない様に話を進めている。

「俺ならとりあえず三人とも試す、と言いたいところだが、やっぱりなまえさんに何かしらこだわりがねえと無理じゃねえかな」
「こだわり?」
「例えば一人ずつと遊んでみたところで、なまえさん自身に選ぶ基準がなきゃ選べねえんじゃねえか?」
「選ぶ基準……。えーっと、背が高いとか、顔がいいとかそういうやつ?」
「まあそうだろうけど。そんな外見的な話でいいならここまで話は長くなってねえわけだろ」
「確かに」
「だからさ、やっぱどんな奴となら一緒にいたいかって話だろ」
「それね、よく近所の小学生にも言われる」
「言われる、じゃねえよ」
「すいません」
「わかったらさっさとそれっぽいこと言ってみろ」
「私は」
「おう」
「……」
「……」

そのまま、何分が経過したのだろう。
頼んでいたポテトはいつの間にかなくなっていて、ガロウくんは私の刀を持ったりまわしたりして遊んでいた。
店員さんがピザを持って来たところで、ようやく助けてくれる。

「悪かった。誘導尋問式に変更だ」
「………ごめん」
「いい。思ったよりも重症だってことがよおーーーくわかった」
「ハイ」
「まず、顔ではないんだろ?」
「顔は別に」
「髪は?」
「すっごいぐちゃぐちゃなのはどうかと思うけど」
「身長」
「考えた事無い」
「体で好きな部分とかは」
「それも、考えた事がない」
「歳」
「話がしやすければ、それで」
「お、いいな。話がしやすくて、で?」
「で……??? たぶんあんまり、私のやっていることについてうるさくされるのは嫌、なのかな」
「さらに?」
「あったかいほうがいい」
「あとは?」
「楽しいといい、かなあ」
「それから?」
「……何も心配いらないくらい、好きでいてくれたら嬉しい」
「なるほどね。なまえさんは、割と欲望に忠実ってことがわかったぜ」
「え、なんで?」
「俺のこと見て、なんだか面白そうだと思っただろ」
「ん、思った、かな。それに多分私に危害を加えたりはしなさそうだしって」
「つまり、楽しそうだったからついて来たんだろ」
「そりゃあ、楽しそうだと思わなかったら……」
「普通は腕にある程度自信がなきゃついてこないぜ? 怪人からのナンパになんてな」
「んー、ん? ええ!!? ナンパだったの」
「いやいや。まあ俺はその4人目になる気はねえけど。普通ナンパだと思うだろ」
「だってオトモダチって……」
「そ、そんな残念そうな顔すんなって、オトモダチでいいからよ……。だから、俺はなまえさんはある程度普通じゃないって話がしたかっただけだって。で、あんたは楽しいことが好きで、流されやすい性格だから、流されちまっているみたいだけど、たまには流されてねえで自分から近づいてみたらどうよって話。相手に任せてたら都合のいい部分しか見えねえぜ、きっと」
「ん、うん。そう、かもね。私からも、近づいてみようかなあ」
「おう」
「ありがとう、ガロウくん」
「なんだなんだ、俺にしとくか?」
「やだよ、せっかくできたオトモダチなのに」
「ははは、それもそーか。俺にも好きな奴ができたら相談に乗ってくれよ」
「ああ、冷蔵庫なら最近出た奴が良さそうだよ」
「何の話だ」

鍛えられた手刀が脳天に振り下ろされていたかった。
ガロウくんはこれから用があるからと去って行って、私も買い物をしてから帰ろうと、その場から去った。
その日の夜、ガロウくんからメールでおすすめのデートコースが綺麗にまとめられたホームページと、今流行のファッションについていろいろと考察されたホームページのアドレスが送られて来た。
随分と律儀な怪人だ。


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20160131:ほっぺにちゅーしてやるからでやられたよねー。友達がいないので普通に友達として。ひどく客観的な考察が聞けたのでした。
 
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