34 vsキング2


マイナーなゲーム(と、なまえさんもキングも言っていた)とは言え、それなりに人が集まるらしい。
年齢層は高め、だろうか。
いかにも、という見た目の者も多い。
そんな人ごみの会場で、その2人は、あまりに場に不釣り合いだった。
そもそも女性というのが少ない。
まあ、それはいい。
人の好みはそれぞれというやつだ。
問題はもう一人の変質者。奴はやたらと黒い格好で腰に刀を差している。
その隣には当然のようになまえさんがいるのだが、いつものようにヘッドフォンと、ソニックに合わせてか、似たような黒い色味の服を着ている。なまえさんは何を着ても似合っている。似合っているが、どうしても、何故か一緒に腰に差している刀だけは解せなかった。
確かに、二人揃って世間からずれていたほうがコスプレっぽく見えはするが、どうにもそこに俺では割って入れない何かを感じてぎりりと奥歯を噛む。
先生は会場の雰囲気に気をとられてそんな二人に気付いていないようだったので、小さく声をかける。

「先生……」

指をさすとすぐに気付いて下さる。

「お! なまえと、ソニックだな」

しかし、気付いて、少し二人を観察すると、やはり俺と同じような表情で「あー……」と声を漏らしていた。
傍から見れば恋人に見えてしまう。
が、そんな事実を俺達は認めるわけにはいかなかった。
否、なまえさんから強い拒絶がない以上は、か。
状況を掴めていないキングが先生に問う。

「だれ? サイタマ氏」
「俺の嫁」
「えっ!?」
「違います先生。俺の嫁です」
「ええっ!? ジェノス氏まで……!!?」

さらに状況がつかめなくなったようで、しきりに首を傾げている。
冗談なのか本気なのか計りかねているようだった。もちろん。本気である。
謎は深まるばかり、と言った様子のキングに先生は笑って、しかししっかりと計算した上で、言う。

「初対面だと営業されるだけだから紹介してやるよ。おーい、なまえー!!」

声に、二人はこちらに気付いて、軽く手を振って近づいてくる。
自然な笑顔にどきりとする。
スーパーで合うと、困った様に笑っていた。
今はまるで友人と接するように自然体なことが、ただただ嬉しかった。
しかし、隣で不機嫌そうに顔をゆがめ、刀を抜こうとする奴だけは気に入らない。
先生に飛びかかろうとしたところを、なまえさんに止められていた。
ざまあない。

「ああ、どうもこんにちは。貴方がキングさん? 家電修理のなまえです」

先生の読み通りに、なまえさんは自分の名刺を取り出して、キングに渡していた。
目の前に居るのがどんな相手でも自分のスタイルを崩さない。
やはり、なまえさんは先生に少し似ている気がした。
この人もまた、強いから、だろうか。

「あ、ご丁寧にどうも……」
「今日はサイタマさんと出場でしたっけ?」
「あ、ああ……」
「よろしくな」

機嫌がいいのは、目の前に居る人間が自分と同じ趣味だとわかっているからだろうか?
はじめからひどくフレンドリーななまえさんとキングに少しむっとして、背後からそっと声をかける。

「なまえさん……」
「うわ、びっくりした」
「どうしてその忍者なんですか」
「え」

一人では大会に出られない、ならば俺を誘ってくれたのならよかったのに。
会えたのは嬉しいが、遊び相手にも選ばれなかったのはどうにも悲しい。

「言って下されば俺も……!」
「はっ、お前じゃこいつの相手はつとまらん」

なまえさんは困った様に「まあまあ」と言って、ソニックの方を押して、俺と距離をとる。
落ち着いて、と言うなまえさんの言う事を素直に聞いて、俺を一瞥した後に、変質者は変質者らしい捨て台詞を吐く。

「サイタマ、今日こそ貴様を消し炭にしてやる……!」
「残念ですが、勝って等身大フィギュアをもらうのは私ですよ……!」

変質者のムカつく台詞に、なまえさんは少しだけ呆れたように笑ったが、一瞬後にはそれに乗ることにしたようで、そう言った。

「行くぞ! なまえ! 最終調整だ」
「合点」

なまえさんは、俺達三人をあまり同じ空間におきたくはないらしかった。
確かに、一番身の振り方に困っているのはなまえさんなのだろうが、それにしたって。

「ノリノリですね、あの二人……」
「そうだな……、まあいいんじゃね。楽しそうで」
「サイタマ氏の知り合いってやっぱ変な人多いよね」
「なまえは普段もっとおとなしい奴なんだけどな」
「隣の変質者は普段通りでしたね」
「あ、そうなの……?」
「それにしても楽しそうですね」
「そうだな」

去って行く二人を見る。

「「……」」

あそこに。

「あ、あの、二人とも……?」

ふ、と優勝商品の等身大フィギュアを見る。
例えばあれがあれば。

「勝つぞ、キング」
「う、うん……」

先生もライバルではあるものの、先生の家に呼ぶということは俺も会えるということだ。

「がんばって下さい。先生」
「おう、まかしとけ」

ぎらりと燃える両目はいつにもまして頼もしかった。

「(怖っ)」

キングはようやく状況を飲み込み始めた様子だった。


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2016/1/20:なんのゲームをモデルにしているか。でもあのゲームはタッグなんてない。チーム線とバトルロワイヤルならあったはず(怖くてオンライン行けない)。
 
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