18 エンカウント 2


なまえはいつにも増して困りきっている。
ソニックはぴったりとなまえの横にくっついている。
道中は手を離さなかったし。一体どういう関係なのだろう。
うどんはうまいが、なまえは今にも泣きそうな顔でうどんをすすっていた。

「なあ、なまえとソニックってどういう関係なんだ?」
「エッ、ア、オサナジミデス」
「へ?」
「スイマセン。オサナナジミデス」
「あー。幼馴染みな」
「……」

なまえは俺の質問にはいつもよりずっと素直に答えてくれてはいるけれど、その度にソニックが俺にものすごい殺気を向けて来て鬱陶しい。
そして、うどんを食べているなまえは俺の視線に耐えかねて、ちらちらとソニックを見上げる。
よほど頼られている様子だ。

「なまえ」
「ん……?」
「俺は食い終わったが」
「あ、残り。あげる。帰ろ……?」
「……後で説明できるな」
「ウン」

なまえは完全に正気を失っている様子だった。
福引きの時もこんな感じで、思考停止してしまっていたのを思い出す。
おびえている? 対応に困る、が許容量をオーバーするとこうなるのだろうか。
ソニックは飲む様になまえのうどんを食べきると、ふらふらとしているなまえの手をとりレジで会計を済ませて、外へ出た。
俺も急いでそれに続く。
どうせ帰る場所は途中まで同じなのだ。

「なまえ? もしかして邪魔した?」

力なく歩くなまえにそう問うと、ソニックに睨まれる。
なまえはびくりと震えて、あー、とかうーとか言い淀む。
目の泳ぎ方が尋常ではない。

「ああ、邪魔だった」
「お前には聞いてねーだろ」
「ふざけるのも大概にしろ! なまえがいなければ今ここで殺してやるところだ」
「それにしても、ジェノスがいたらもっと話がこじれてたところだな」
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……」
「なまえ……」
「大丈夫か」
「吐きそう」
「来い」
「ん」
「え、ちょっと、お前ら……?」

ソニックが言うと、なまえはソニックに体を預けて、ソニックは当然のようになまえを抱き上げる。お姫様抱っこというやつだ。
ジェノスがいなくて本当によかった。あいつなら、「こちらへどうぞ」とか言って張り合いかねない。まあ、俺もけっこうくるものがあるけれど。抱えて運ぶくらい俺がしてやるのに。なまえの顔色はひどく悪い。こんなに顔色がよくないなまえも見たことが無い。

「いいかげんどこかへ行ったらどうだ。俺たちはお前とは違い忙しい」
「いやいや、お前だって似たようなもんだろ」
「なまえがこんな有様なのは誰のせいだと思っている?」
「いやあ。でも好きな奴が他の男と一緒に歩いてたら気になるだろ?」
「は?」
「だから、好きな奴が」

ソニックがこちらに手裏剣を投げて来た。
物騒な奴。
指だけでそれを受け止めると、なまえは薄く目を開けて心配そうにこちらの様子を見ていた。
ソニックはそんななまえに視線を落とすと、ふう、と一つ息を吐いた。

「……心配するな。ここでやりあったりしない」

なまえは安心したように笑って、目を閉じた。
こんな表情もするらしい。

「だからお前もふざけたことを言うのは止めておけ」
「ふざけてなんかねーよ」
「お前だけか?」
「主語を言え主語を」
「なまえを好きだなんてほざいているやつは」
「え、いや、もう一人いるけど。それが?」
「なるほど」
「なんだよ。お前もだろ」
「一緒にするな。貴様らなんぞとは年季が違う」
「関係ないだろ」
「そうかもしれないな」

お。
そういう返しとは思わなかった。
俺が呆気にとられていると、ソニックは「なんだじろじろと」と、いつものように睨んで来ては怒っていた。

「お前との決着は、近いうちに必ずつける。覚えていろ」

びしり、とソニックはそれだけ言い残して走り去ってしまった。
う、という小さななまえの悲鳴が聞こえたが、かなり調子が悪そうだった。
あんなに追い込んでしまうとは思わなかった。
そんなに嫌だったのなら、嫌だと言ってくれたらいいのに。
なまえが自分の空間を大切にしていることは知っていたが、もしかしたら、踏み抜いてはいけない場所だったかも知れない。
それはたぶん、なまえの隣よりも家よりも大切な領域だったのだろう。
はじめて出会うことに対してはひどく慌てることももう知っている。
ただでさえ最近はジェノスも突進して、俺も便乗するように構っていたのだ、そういうのを含めて、許容量をオーバーしたのかも知れなかった。

「まあ、今度は、ソニックの居ない時に来るか」

別にソニックに遠慮する理由は見当たらなかった。
俺やジェノスが誰を好きになろうが、大切にしようが、そんなものは俺達の勝手なのだから。


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2016/1/10:ジェノスとエンカウントするのはたぶんあれよね、髪が短くなってから。
 
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