日曜日の前向きさん4


今、大丈夫? となまえが声をかけたのは人間ではない。頭と片腕がない何かは、声をかけられたことに驚いて、(たぶん)なまえの方を見ている。
なまえはと言えばにこりと笑って膝をつく、生きていたのはほんの子供のあいだだけだったのだろう、それは、随分小さな体をしている。
行き交う人間共に紛れて、夜の闇に溶けかけながらも、そこに存在していた。通行人がなまえを避けていく、何も無いところにしゃがみこむスーツの女を笑っていく奴もいる。何がおもしれーんだよ。呪うぞ。

「服もボロボロだね」

そのままそこにいたら、悪い霊って勘違いされちゃうかもしれないよ。なまえは笑った。笑って、そっと、霊の体に触れる。
なまえの力は、シゲオやリツ、花沢とは根本的に異なっている。いや、もしかしたら、同じことも出来るのかもしれないが。
血まみれの服、赤黒いシミが蒸発するみたいに消えて、なくなっていた腕と頭が修復された。治った、と表現するにはあまりに奇跡めいている。

「よし、帰れる?」

子供はひとつ頷いて消えてしまった。還って行ったのだろう。なまえから分け与えられたものに満足して。

「理由、聞かなくて良かったのか?」
「……聞きたかった?」
「いいや、きっとろくなもんじゃねえや」
「だと思う。ひどいことする人っているもんだね」

俺様は悪霊だけどな、という言葉を飲み込んだ。なまえは手を合わせて、誰とも知らない子供のために一筋涙を流して立ち上がる。次生まれ変わってくる時は、きっと幸せだろうぜ、などとなまえに言ってやると、なまえはありがとう、と微笑んだ。
この間にも、周りを人間が行き交っている。独り言を言っているヤバいやつに見えるのだろう。なまえの、そんな群衆さえ気にならないと言う態度は、より、なまえを際立たせている。

「帰ろうぜ、それやると疲れるんだろ」

俺様が体をぴたりと頬に引っつけて言うと、なまえは「大丈夫。あのくらいならなんでもないよ」と、まるで一人になりたいみたいに返してきた。
そうはいかねえよ。俺様はお前に惚れてしまっているのだから。


-----------
20190513:エクボはいいぞ…


 
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -