どうか思い知ってください10


なまえの声が聞こえる気がする。あの人は悪くないんだよ。と、悲しそうな声だ。ああわかっているとも。お前の言いたいこともやりたいことも、やりたくないことだってわかってる。だから任せておくといい。
悩み相談なら得意分野だ。なんならマッサージまで付けてやるとも。だからなまえよ、成功したら、賑やかになった事務所に遊びに来て、学生共の勉強でも見てやってくれ。

((どうか思い知ってください:10))

「で、どーすんだよ。霊幻」

まず、その女優に会わなければはじまらない。エクボには悪いがまず先陣切って行ってもらって、居場所をつきとめてもらう。頼むと、「あんだけ強い負の感情出してるやつだからな、すぐ見つかんだろ」と迷いなく飛んで行った。

「師匠、僕達は」

慣れないテレビ局で緊張気味のモブと芹沢にはそれぞれに頼みたいことがある。芹沢にはその辺で怪奇現象でも起こして注目を集めておいてもらって、俺とモブはエクボが帰って来次第例の女優に会いに行く。二人は不安そうではあるがしっかりと頷いていた。よし。大丈夫だ。相手はなまえの友達なのだから。そう気負うことも無い。向こうだってもしかしたら、なまえから俺の話を聞いていたかもしれない。

「おい、見つけてきてやったぜ」

なまえ。きっと今この瞬間も、俺や、こいつらの幸せを祈ってくれているんだろ。でなきゃこんなに爽やかに気持ちであるはずがない。
率いて言う、「行くか」と、極めていつも通りの調子で。



気分は、最悪だ。
朝からストーカーから電話が五件、解読不能な手紙が十通、呪いのようなファックスが三十四枚。マンションを出るとカメラを向けられて、マネージャーにはその目のクマを何とかしてこいと言われ、打ち合わせでは女子高生のアイドルに影で笑われた。スマホを開けばSNSはクソリプの嵐。下らなすぎて吐き気がする。この世界は馬鹿ばかりか?

「あのー、ちょっとさっきの打ち合わせの件、訂正したいことがあるんですけど」

オマケにこの段取りの悪さだ。せっかく今流れを頭に入れたところだと言うのに。覚え直しか? やってられない。どうにか乱暴に傾きがちな感情を押さえ込んでドアを開ける。
見たことの無い、金髪の男が立っていた。いや、見たことはある。一時期、詐欺師だかなんだかで話題になっていた、あいつの友達の……。

「言いたいことはたった一つだ」

名前は確か、霊幻……とか……。

「なまえが会いたがってる」

そんなはずあるか。私はあの子を今日まで呪い続けている。


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20190415:次で最後
 
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