どうか思い知ってください09


ひどい夢を見た。

「霊幻さん、大丈夫ですか?」
「大丈夫に決まってるだろ。何言ってんだ」

言いながら、目が覚めると病院へ飛んで行ったことは言うまでもない。体が疲れていたけれど、なまえのことを考えると、俺が大丈夫ではない、などと言えるはずはなかった。

((どうか思い知ってください:09))

なまえが起きるのを待つのも神経を削っておかしな夢を見るのなら、睡眠時間なんていいからなまえに面倒な感情を飛ばしている人間を探そう。呪いや生霊の姿からある程度特定できないだろうか。
モブが言うには黒い塊だったからわからない、らしいが、エクボ曰く、そういう長引く執念深いやつは女かもな。ということらしい。素晴らしい証言だ。捜査は大して前に進まなかった。
ここで諦める俺でもないので、なまえが調子悪そうにしだした近辺でなにかなかったかと家の雑誌や新聞の切り抜き、当時のドラマのDVDを引っ張り出して日夜確認していった。
すると、さすがは俺だ、一人の女優のことが気にかかり始める。
一人、居るのである、丁度なまえが倒れるか倒れないかくらいの時期、なまえとよく共演していた女優だ。ドラマや映画、舞台、バラエティ番組などでもだ。よくよく思い出すと、なまえも、その女優とは仲良くさせてもらっている、と話していた気がする。
なまえのことばかり気にかけていたから気付かなかったが、注意深く観察すると、やはり、どうにも気になる。友人関係であったとなまえは言うが、この女も果たしてそうだと思っていたのだろうか。今も思っているのだろうか。
なまえ側だけの記事ではどうにもと思い、次の日は事務所を臨時休業として一日かけてその女優のことも調べあげた。
俺の中で、確信が強くなっていく。
間違いないと思ったのは、その女優となまえが一緒に受けたらしいオーディションで、その女優だけが落ちたらしい、と、その事実を確認した時。
女優のブログ、SNSには、なまえには勝てない、前向きに行こうなどと書かれていたが、ファンや一部のメディアは、なまえが主演の座を奪い取ったのだと書き込んだり、コネを使ったと報じたりしていた。
現在、何かと上手くいっていない、あるんだかないんだかわからない問題に追われている、話題の女優であった。

「…………呪いの元を救えれば、だったな」

なまえは依然眠ったままだ。起きる様子は微塵もない。看護師に確認しても、起きている様子はないと言う。
俺はいつも通りに花を持ってきて、花瓶の水を替えて、ちょっと迷ったが窓も開けて換気をし、それからなまえの隣に座った。
ペンを手に取り、くるりと回す。
新隆は器用だなあ、なんて言われたのを思い出す。そんなこと言って、こいつの方が器用だと俺は得意げになりながら思っていた。
手紙を書く。
大丈夫。頼りになる奴らもいるし、なまえがこれを読む頃には、きっと全部終わってる。


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20190415:霊幻師匠はいいぞ。
 
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