どうか思い知ってください06
久しぶりに神に祈った。相手が呪いなら、もう本当に、気分転換くらいしかやってやれることはない。きっと大丈夫、モブにとって呪いなど、大したものでは無いのである。「俺には無理だ」と芹沢は絶望したみたいに言った。自然、全員の目がモブへと向かう。
「これは、」
嘘だって言ってくれ。
((どうか思い知ってください:06))
病室に、男三人と悪霊とで押しかけて、看護師は一瞬止めようとしていたが、俺の顔を見て止めるのをやめた。なまえに何か言われていたのかもしれない。
病室に入るまでは大丈夫だった。入ってからも平気だった。しかし、なまえの様子を深く深く確認するなり、芹沢は顔を青くして、モブは冷や汗をかいていた。
「難しいかもしれません」
なにがどう、とかは俺が聞いたってわからない。だが、簡単に諦められるなら、こいつら全員を連れてきたりはしない。
「ま、前みたいに、お前も意識に入り込むのはどうだ?」
「……とりあえず、やってみます」
エクボ、とモブが言うと、エクボはわかってる、と答えていた。モブのことも何度か手紙に書いたけれど、なまえはあれが俺の弟子だとわかるだろうか。きっとわかるだろう、なまえの勘の鋭さは全国クラスだ。
「芹沢よ」
「は、はい」
「お前には、何が見える?」
白いベッドの上、テレビで見るより数段繊細で極まった美しさを湛えて、なまえは静かに眠っている。演技なんじゃないかってくらい綺麗だなあと俺はいつも思っていたけれど、もしかして、芹沢には、こいつの姿が禍々しい何かに見えていたりするのだろうか?
「……体の、この人の中で、すごく大きくなった呪いが渦巻いてるのが、見えます」
「中で?」
それはどういうことなのだろう。中、なまえの中に呪いがあるなら、やはりモブを行かせたのは正しい判断だったのだろうか。
「霊幻お前、この場所を気持ち悪いと思ったことが一度でもあるか?」
「あるわけないだろ、なまえの部屋だぞ」
即答すると、エクボはそれっぽくため息をついた。そして首を振る。
「普通はそうはならねーよ、こんな大層な呪い受け続けてたら、体から呪いが漏れだすのが当然だ。部屋どころか、病院全体が影響受けてもおかしくない」
「……、病院は、なんともねーぞ」
「ここによく来るお前もなんともないな?」
「ああ、むしろ、ここに来ると調子が良いくらいだ」
モブの姿をしたエクボと芹沢は意味深に俯いてしまった。なんだと言うんだ。いいや、待て、ここまで情報がもたらされたら、俺にも想像することが出来るんじゃないか? なまえの体に起きていること、なまえが今どうしてなかなか起きられないでいるのかということ。なまえ、は。
「なまえは、一人で全部を受け入れていやがる」
跳ね除けることも返すことも出来ただろうに、それをせずに。「なんで」俺は思わずエクボに言うが、「そんなこと俺様が知るか」と返された。
なんで。
俺は椅子に座って頭を抱えた。
程なく、モブが戻ってきたが、なまえは目を覚まさなかった。
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20190408:REIGEN読みました