どうか思い知ってください05


超能力者っていうのは、どうも感覚が鋭敏らしい。「花の匂いがしますね」芹沢が言うので、俺は少しだけ驚いた。と、同時に、そういうのもあるのか、と嬉しくなる。

「? なにかいいことでもあったんですか」

なにもない。いいことが、勝手に起きていたのかもと思うと、自然と笑顔になってしまうだけだ。でも次は、うんと香りがいいのを選んでこよう。

((どうか思い知ってください:05))

膝上に、ずっとなまえの手の感覚が残っている。数秒でずるりと落ちてしまったが、時間なんて関係ない。あの時確かに、なまえはなまえから俺に触れたのである。たったそれだけの事で、俺は気持ち悪いくらいに喜んでいる。

「おい、霊幻よ」
「ん? なんだよ」
「なまえの病気のことだが」

気安く呼ぶなと言ってやるとちょっと黙ってろと真剣な顔をして言われた。仕方ないから黙ってやる。なまえの病気が、なんだって?

「医者は原因不明の奇病って言ってるんだよな?」
「そうだな。体調も日によって様々らしい」
「どうにも気になってな、何度かあいつのところに行ってみたり、試しに憑いてみたりした結果……」
「おい、なんてことしてやがる」
「黙ってろっての」

エクボがふわふわと揺れている。
なまえ、なまえ。役者として一線で活躍していたのに、突然謎の病にかかり活動休止。復活を願うファンの声は未だに絶えず、しかし、実は死亡している説まで浮上し、テレビも週刊誌も、もうなまえを報じることはない。
エクボが言う。

「ありゃあ、病気じゃねえな」

悪霊が、人間医療事情をどれだけ知っているかはわからないが、その言葉には説得力があった。病気ではない。病気でなくて、人間の体に強い影響を与えるもの。

「まさか、呪いか……!?」
「呪いっつーか、まあ、その認識でいいだろ。正確には、あいつを日夜恨んで憎んで殺してやろうって生霊が、」
「ってことは、お前らなら、なまえを助けてやれるのか!?」

例えばエクボや、芹沢や、モブなら。
エクボに詰め寄ると、エクボはわざわざ片手を出して、頭のあたりをがりがりと掻く。当たり前だろ、と言ってくれ。俺様やシゲオなら朝飯前だ、と。言ってくれたら。

「どうだろうな。少なくとも、俺様では払えなかった。初期の段階ならなんとかなったかもしれねえが、如何せん、呪いがでかくなりすぎてる」

その証拠に、

「どんどん起きれなくなってるだろ」

明日、モブと芹沢、それからエクボを連れて病院へ行くことに決めた。


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20190407:これは個人的な頼み事だ
 
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