どうか思い知ってください03


事務所に戻るなり、「寝てた?」と聞かれた。寝ていたし起きていたし寝ていた。俺様が答えないでいると霊幻は「だよな」と勝手に勘違いをしてパソコンに向かった。しょうがねえやつ。

「起きてた。少しだが話もできたぜ」
「えっ!?」

間抜けな顔で立ち上がった。

((どうか思い知ってください:03))

いっそ哀れになるくらい、慌てていた。

「え、おま、なん、お、起きてたなら教えてくれって言ったのに……!」
「すぐ寝ちまったんだよ、変な病気だな」
「あ、あー、ああ、そういうこと、それなら仕方ないな……、うんうん、もしかして、もう本当にショット的にしか起きられないのか……?」
「そんなこと俺様が知るわけないだろ?」
「いやいや、ご苦労。話し相手になってくれたなら、それはそれだ。……ごほん、あー……、で、だな、」
「?」
「えーーー、あーーーーーー、その、だな、あいつは、」
「なんだよ、ハッキリ言えよ」
「いや、その、だからあ、……、」
「あん?」
「なまえ、な」
「おう」
「お、俺の事、なんか言ってたか……?」
「はあ?」

バカだこの男。
そんなに気になるなら自分で行けばいいものを。いや、行きたいし話がしたいから俺様を使ってたんだったか。それにしたって下らない。この男は本当にあの女と付き合いが長いのだろうか。
何か、だなんて、思っていても言うはずがないとわからないのか?

「言ってねえ。俺様とはもう少し話がしたかったって言ってたぜ」
「は!? いや、それは……、っ、ふ、ふうん? よ、よよよかったなあ、エクボくん。けどなまえはその位のこと誰にでも言うぞ! いいか! 誰にでも言ってるんだからな!」

なんだこいつ……。
ほんっとーに、だれにでも、言うんだからな! と何度も繰り返して、息が切れてきたところで椅子に戻っていく。

「はあ……、この作戦も失敗、か」

拗れてんなあ。あまり触りたくない気持ちはあるが、ひとつ約束したことがある。あれは伝えておかないとなまえだけでなくほうぼうに迷惑がかかるだろう。

「テレビ見たから持って帰れってよ」

霊幻は、びた、と動きを止めてまたがたりと立ち上がる。な、なんだこいつ。情緒不安定かよお……。

「……もしかしてそれ、伝言か?」
「それ以外にねーだろ?」
「そうか、そうだな」

そうか、と霊幻は繰り返した。引くほど嬉しそうにしている。口元隠しても無駄だぞ、霊幻。
そんなに話がしたいなら、もっと頻繁に通ってやればいいのに、思ったが、なまえが返事を直接書かない理由を考えると、霊幻がそうできない理由がわかった気がした。
この調子で霊幻のヤローをからかうと面白そうだから、また、なまえの所に行ってやるかな。


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20190326:過大評価をものともしない
 
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