続、拝啓、貴方の:02


近頃なまえは、いつにも増して忙しそうにしている。気合を入れていろんな仕事を受けたりするのはいいが、相変わらず友人と言える人間は少ないようだ。
親友でもあった俺が恋人となったことにより、総数で言えば減っている。正直な話、また友人のように振舞ってやってもいいのだけれど、そんなことをしても、もう仕方が無いような気もしていた。
俺達の関係は、今、何がどう転んでも、恋人同士なのだから。

「明日も仕事だったか」
「んん。明日はヒーロー協会からの仕事だね。やけに高額な報酬で……」
「なんだそれは。どういうことだ」
「なんなんだろうね。わからないけれど行こうと思って」
「そうか、危なければすぐに連絡しろ。走って帰って来い」
「そうする」

なまえは作業しながら頷いて、そうして一つ修理を終えたらしかった。眠そうにあくびをしていたと思えば次の瞬間から別の仕事を片付けている。
家電というかガラクタというか、汚れたり錆びたりしている家電の山に手を突っ込んで、磨くところから始めている。
どうやらその山はすべて一つの家から出てきた家電らしく、磨いた端から、綺麗に並べていく。

「それは?」
「新しいお客さんがまとめて依頼してくれた仕事だね。綺麗にして直して欲しいって」
「……直したところで使うのか?」
「どうだろう。でも、仕事だからね」

「ほどほどにしておけよ」と俺は言うがなまえは「うん」とも「ううん」とも取れない返事をして作業を続ける。
時間を確認すると、もうすぐ日付が変わりそうだった。何をそんなに必死に仕事をする必要があるのかはわからないが、楽しそうな背中にそれ以上何も言うことはできなかった。
まだまだ元気そうではあるし、体を壊したりというのもなさそうだ。
止める理由もない。
しかしこいつは。

「……俺はもう寝るが」
「うん、おやすみ。あ、明日の朝食べたいものとかある?」
「和食」
「了解。上手く作る」
「それはいいが、なまえ」
「うん?」
「お前もさっさと寝ろよ」
「うん、ありがとう、大丈夫」
「……そうか。それならいい」

それならいいが、全部が全部良い訳ではない。
と言うか、いまいち、いや、これはこれで悪い訳では無いのである。やはりこの女のペースに合わせてやれるのは俺だけだなと確信できる、これは悪い事ではない。
が。
はじめから近すぎたのも手伝って、はじめから熟年夫婦のようになっているのは如何したものか。

「……」

無理矢理にでも、色々教えてやったなら、また少しずつ変わるだろうが。先のことは、やはりあまり考えられていないようだ。
とにかく頑張ってみよう、今まで本気でなかったものに本気を出してみよう、そう決意するなまえの姿は、恋愛に向いているかと言えば、残念ながらそうではない。

(今更何を心配するわけでもないが)

恋人になった事実と、現状とを見てみると、どうにも。

(いいや、これでいい)

がんばりはじめたなまえに、そっちじゃないとは到底言えない。それもいいがこっちにも力を入れろなどと、頼めるはずもない。
なまえの味方で居続けてやるのは、案外骨が折れるのである。


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20170906:それだけでは足りないなんて、口が裂けても。
 
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