続、拝啓、貴方の:01


晴天の空の下、街中でばったりと出会ったジェノスくんは言う。

「こんにちは、なまえさん」

五メートルは離れているだろうか。
私も「こんにちは」と返しはするが、会話はそれだけだった。お互いにどう出るべきかを伺って、数秒沈黙だけが流れて行った。
ジェノスくんはとうとうそこから「それでは」とまるでロボットのように言って、逃げるように立ち去った。

「……うん、じゃあ、また」

ちなみに、だが、サイタマさんもこんな反応だ。
師弟揃ってどうにも私とは居ずらくなってしまったようだ。
今なら私も少しだけわかる、きっとあの時ソニックに「もう待つのは飽きた」とか言われていたら同じようにただの世間話をするのも躊躇って、顔を見るのも辛かっただろう。
私はどうするべきだろうか。
買い物を済ませて帰り道、そんなことを思うけれど、結局、私ができることはそう多くないのだと結論に至る。
私には彼らの希望を叶えることはできないのだ。
相談できる相手も近所の小学生か得意先の主婦くらいというのもなんとも寂しい話な気がする。同年代の女子の友人、というのをみんなどうやって作っているのだろうか。
全くもって謎である。

「んー……」

ソニックとは、恋人になったわけで。そしてソニックは、「好きに生きていい」と言ってくれたりするわけだけれど、やはりそれにも限度があるというか、あんまり好き勝手するのもきっと心の底ではよく思わないはずである。
私はぼーっと考え事をしながら歩いていた。
ジェノスくんとサイタマさんは友人で、ソニックは恋人である。私はそうであることを選んだ。そうであることを選んでおきながら、大切な絆が薄れてしまうのを惜しんでいる。
恋人はソニックだ。
それは、一番を決めたということだろうか。
いいや、そうではなくて。ただ、その気持ち自体はずっと持っていたから、だから。
私は。
私はとにかく、全力でーー。
意識が奥へと入りかけた、その瞬間。

『お前と一緒に居られる人間なんて存在しない』

頭を割るような痛みとともに、そんな一言が体を貫いた。
これは、なんだっただろうか。
きっととても古い記憶だ。親か、兄弟に言われたのだろう。

「……なんで今更、そんなことを」

言われた当時は、そうなのだろうかと本気にしたものだけれど、今となってはそんなことはないと確信している。
私は割と人気のある家電修理屋だと思うし、ソニックはもう何十年という単位で一緒にいてくれている。

「……?」

私は何を不安がっているのだろう。
表面上では割り切れているはずで理解しているはずで。
いいや、少し避けられているのがショックなだけだ。そんな風にショックを受ける資格なんてない。私は頑張って挑戦していくと決めたのだから、そこさえ揺らがなければ、何も問題は無いはずだ。


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20170703:また、はじめましたがんばります。
 
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