◇短編 | ナノ



悠久の時は壁

「いったたたぁ!痛い、いたいっスよ!」

ジローが銀の髪に事務用の輪ゴムを絡めていた。
本人はちょんまげを作ることが楽しくてたまらないのか、後輩の悲痛な叫びも届いていない。

「おい」
「なに?宍戸。まさか長太郎は俺のだとか言わないよね?たまには遊ばせてよ」
「……」

「痛い……ししどさぁん……」


宍戸は悲しげな小犬の瞳から視線を逸らした。


「ジロー。中庭行こうぜ?膝枕してやるよ」
「えー!マジ!?行く行く!!」
俺、亮ちゃんの膝枕好き〜。
ジローは宍戸の腕に絡みつくとそのまま部室を後にした。

「…宍戸さん…」

1年遅く生まれてしまった。出会って1年も経っていない。
非力な自分が恨めしい。




End.





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