融解 少し寒い、宍戸さんの部屋。 俺も宍戸さんも、温かいを通り越して、暑くなってきた頃。 「…どうしたの、宍戸さん…集中して」 「あ…ご、め」 「なに考えてたの…?」 「…長太郎、…は、だ…白いなって、思ってた」 指が静止した。 「もやしみたいスか…」 小さい頃、よく言われたこと。長太郎くん、手も足も真っ白だ、もやしみたいだって。 もやし もやし 悔しくて太陽を浴びまくったら、真っ赤になって、痛くて泣いた。 「や…、綺麗だなって…」 美術の教科書に載っていた陶器を思い出すと言ったら、笑われるか。呆れるだろうか。 「宍戸さぁん…。それ女の子に言うセリフだよ」 宍戸さんの呟きに、俺は笑った。 苦笑いと照れ笑いが半分ずつ。 「え…?ああ、そうか…な。悪い」 「いえ…うれしい、ですけど」 「なんで?」 「…アトで言います。なんか、燃えた」 「え?…ぁっ。ば、かやろ…!」 夏は宍戸さんの傷の手当ばかりしてた。 でも今は、俺の方が癒されてばかりだ。 熱に浮かされながら、そう気付いた冬の日。 End. 前 次 Text | Top |