◇短編 | ナノ



融解

少し寒い、宍戸さんの部屋。
俺も宍戸さんも、温かいを通り越して、暑くなってきた頃。


「…どうしたの、宍戸さん…集中して」
「あ…ご、め」
「なに考えてたの…?」
「…長太郎、…は、だ…白いなって、思ってた」

指が静止した。

「もやしみたいスか…」

小さい頃、よく言われたこと。長太郎くん、手も足も真っ白だ、もやしみたいだって。

もやし もやし

悔しくて太陽を浴びまくったら、真っ赤になって、痛くて泣いた。





「や…、綺麗だなって…」

美術の教科書に載っていた陶器を思い出すと言ったら、笑われるか。呆れるだろうか。





「宍戸さぁん…。それ女の子に言うセリフだよ」

宍戸さんの呟きに、俺は笑った。
苦笑いと照れ笑いが半分ずつ。

「え…?ああ、そうか…な。悪い」
「いえ…うれしい、ですけど」
「なんで?」
「…アトで言います。なんか、燃えた」
「え?…ぁっ。ば、かやろ…!」



夏は宍戸さんの傷の手当ばかりしてた。
でも今は、俺の方が癒されてばかりだ。

熱に浮かされながら、そう気付いた冬の日。




End.





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