◇短編 | ナノ



僕しか知らないこと、君にだけ教えること

部活帰り。
木に囲まれた公園の一角に置かれたベンチ。

会話が途切れ、夕日の赤さに気づく寂しさ。

ふとした瞬間。
キスの呪縛に囚われる。


重なる唇は馴染むようにできている。
上唇を舐め、下唇を甘噛みする。
緊張の解かれた舌を口に含み吸いあげると、耳に届く甘い声。締めつけられる腕の筋。

深く夢中になりたいというとき、一つ年上の恋人は理性的だ。
頬を手のひらに包まれて、名残り惜しくも唇は離れていった。

「これ、好き」

こうして伝えてくれるのは、あなたの理性を飛ばしてもいい合図でしょうか?

もう一度差し出された舌の赤さに、底なしのように落ちていく。




End.





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