◇記念日 | ナノ



聖夜のプレゼント 4

「ぎゃー!どどど泥棒の上に露出狂かコラァ!!ただじゃおかねぇぞ!」
「へ?あ、違っ…ちょ、ちょっと待って下さい!」

泥棒兼露出狂は再び布団の中に潜りこんだ。
何事か話しているような声がしたが、俺はその隙に玄関の方へ逃げた。男はけっこうガタイがよくて、俺一人じゃどうにもならなさそうだったのだ。助けを呼ばなければ…!

すると、なんともタイミング良くインターフォンが鳴った。
しかし喜んだのは俺だけではなかった。

「来た!」

泥棒はパッと笑顔になると、裸のままこちらへやってくる。

「うわっ!こっちに来るんじゃねえ!」

身の危険を感じた俺はすかさずキッチンの方へ方向転換したが、男はそれには目もくれずに玄関へ行き、ドアを開けた。

「出張早々迷惑をかけるな。注文の品だ」
「早いなぁ!どうもありがと」

ここにサインくれよ、なんて声がする。
宅配物らしいが……どうして配達員は裸の男に不審がらないんだ!?
しかし、アイツが泥棒だと知ればとにかく協力はしてくれるだろう。
俺は玄関へ忍び寄り、後ろから不意打ちに泥棒へ飛びつき、はがいじめにした。

「わっ、ご主人さま?」
「おい配達員!こいつ泥棒なんだ!早く110番してくれ!!」
「はぁ…?」

喧嘩なんて中学以来していない俺が必死に泥棒を押さえつけてるというのに、配達員は俺に向かって不審そうな目を向けた。

「…もう仲良くなったようだな。だがつまらない冗談は注意した方が客のためだぜ、鳳」

配達員は鋭い目でそう告げると、段ボールを泥棒に押し付けた。

「じゃあな」
「うん、ありがと日吉」

そうして配達員はティンカーベルみたいにキラキラした光を振りまいて消えていった。

「に…人間が、消えた…」
「ふふ。彼は人ではありませんよ、ご主人さま」

泥棒は微笑んだ。
犯罪者とは思えない優しい笑みに、思わず目を奪われてしまった。
しかし次の瞬間、俺は女性の叫び声で我に返った。

「きゃあ…!」

隣に住んでいる大家のおばさんだった。
しかし彼女は部屋から出てきたところなのに、俺達を見るとなぜか顔を赤くして、すぐにまた部屋に引っ込んでしまった。

「お隣さんですか?」
「?…まぁ、うん」

俺は泥棒を後ろから両腕で押さえつけたまま、意味も分からず立ち尽くす。

「はぁ、寒い〜っ。ご主人さま、ここは寒いので部屋でギュってして下さい」

とんでもない誤解をされたことにようやく気がついた俺は、人生の終わりのような絶望を感じた。





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