聖夜のプレゼント 2 「ほうら、受け取りやがれ!どうした?サンタクロース様からのプレゼントだぜ!」 「いや、無理。手動かせねーし」 あれから、俺は鞭でぐるぐる巻きにされて床に転がされてしまった。 サンタクロースと名乗る男は偉そうな態度のくせして意外とバカだった。 「チッ、仕方ねえな。そこにプレゼントを置いといてやるから、後で開けておけよ。おい、樺地」 「ウス」 樺地と呼ばれたトナカイ(鹿ではなかった)はソリに積んである白い袋から、きれいにラッピングされた箱を下ろす。 金箔張りの大きな箱に目を奪われていると、樺地はのそりのそりと俺の方へ近づいてきた。 まさか踏みつけられるのでは。 怖くなったが、それは被害妄想だった。 樺地は俺のそばに箱を置くと、やさしく鞭を解いてくれたのだ。 「…跡部さん…規約違反です…」 「あぁ、俺様としたことが。“人間に危害を加えてはならぬ”だったな」 「ウス」 「よく気がついてくれた。早く仕事は終いにして、二人で帰ろうな」 「ウス」 ウス、ウスって…トナカイってこんな鳴き声だったか? よく分からないが、とにかくこいつらは泥棒じゃないらしい。 奴らは何も盗らずソリへと乗り込んだ。 「おい貴様。それは俺様が直々にセレクトしたものだぜ。大事にしないと没収しに来るからな」 「いや、持って帰れよ。こんな怪しい箱!」 「なんだと」 「プレゼントとか言ってるけど騙されねえぞ、似非サンタ」 「…騙す…?」 「今日は23日だぜ?クリスマスじゃねえだろ!おまえ偽物だろ!?」 跡部は一瞬キョトンとした後、「ファーッハッハッハ!」とふんぞり返って大笑い。 「き、聞いたか、樺地?」 樺地は笑わなかったが、「ウス」とはっきり頷いた。 まるで俺が間違っているような雰囲気じゃねぇか! 「おまえは…まだ若いのに大分脳細胞が死滅しているようだな。いくら新人にして国単位のプレゼント配送という前代未聞の重大任務を任された俺様も、身体は1つなんだ。カリスマといえど1日で任務をこなすというのは不可能に決まっているだろう。アーン?」 「…そこはなんとなく常識的だな…」 「まぁ、いずれ俺様がトップになれば、古来の伝統を守り続けて手際の悪ぃクリスマスプレゼント事業も大改革してやるがな。配送時間は半分以下に短縮して…っと、人間との無用な会話は規約違反になるんでな。あばよ!」 行け、樺地! サンタが指をパチンと鳴らすと、トナカイは幽霊のようにベランダの窓をすりぬける。 奴らはそのまま遠い遠い夜空へ駆け出して星に紛れてしまった。 「なんだよ…鞭ってトナカイに使うもんだろ!俺ばっか叩きやがってあのサンタ」 部屋にはプレゼントと俺だけが残されて、シンと静まりかえった―― 「わん!わん!」 ――のも束の間、プレゼントの箱の中から、小さく犬の鳴き声がした。 前 次 Text | Top |