◇記念日 | ナノ



聖夜のプレゼント 8









「鳳。今回の対象者は無意識であるが、かなり強く俺達の奇跡を期待している。しかも厄介なとこがあってな…こいつは長期プロジェクトになるかもしれねぇぜ…っておい、聞いてるのか?」
「え?あぁ、はい。それにしても宍戸亮さんって和風美人ですね。…まるで夜空みたいな瞳だ…」
「…ハァ…?まぁ日本人らしい顔立ちの奴じゃねぇの。宍戸のことはこの資料に詳しく載ってるからよく読んでおけよ。ややこしいぜ……っておい、ちゃんと聞いてんのか!?」
「あ、は、はい!」
「それともうひとつ。25日に一度報告に戻って来い」
「……はぁ…宍戸さんか〜……」
「鳳!」
「え?あっ、はい!えっと、に、25日に戻って来るんですねっ?」









「あの時の打ち合わせ…おまえはまっっったく!集中していなかった!!」
「か、勘違い…。申し訳ありませんでした」

跡部にギロリと睨まれて、長太郎はいたたまれなさそうに毛布に顔を隠した。

「そこに直れ!!クリスマスイブに人間を悲しませてどうするんだ!」
「ほほほ、本当に、申し訳ありません…!」
「おい跡部…長太郎は風邪引いてるんだぞ」
「だまれ、人間」
「ご主人さま、俺が悪いんです。大丈夫です」
「でも」
「悪化したらギュってして温めて下さいね」
「!!」

結局、長太郎はベットの上で土下座をしてた。
この時はひどい奴だと思ったけれど、翌朝また日吉がやってきて、大量のネギと「首に巻け」というカードが届いた時、俺は跡部なりに長太郎を心配してたのだということを知る。

「報告はもういい。風邪を直したら宍戸に礼儀を尽くせ。それから、犬か人間か、どちらかちゃんとしろ。人間界で頻繁に魔法を使うことは禁止されている」
「はい。了解しました。そちらもはっきりさせますので」

跡部は不服そうな顔でフン、と言うと、ようやく帰って行った。

「人騒がせだな、アイツは…ってお前もだけどさ」
「ごめんなさい」

長太郎は笑いながらもどこか悲しそうな顔をする。
うぅ…俺も怒ってばっかりじゃ良くないよな。俺がこんなんだから、長太郎も不安になっちゃうんだろうし。
でもいきなりこいつ人間になるし……。
だーっ!照れてる場合じゃないぞ俺!こいつ犬だし、平気だ!よし、大丈夫だ!

「…え、ご、ご主人さま?」

俺は無理に開き直ると、長太郎の寝ている布団に入り込んだ。

「もっとそっち寄れ!…あっためてやるから」
「ご主人さま」
「部屋寒いのは、ここ借りてる俺のせいだし……悪化してからじゃ遅ぇだろ」

自分でも柄じゃないと思うけど、長太郎に感極まったような顔をされてますます恥ずかしくなった。なので背中を向けることにする。





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