◇誕生日 | ナノ



19

ピシッと長太郎の動きが固まる。
「え?」
つーか長太郎チャラくね?
いきなり手ぇ出すとか。
俺の天使どこ行った。
「わっ、わ、違う!聞くな!」
「す、すみません。俺、気が早かったみたいです」
「あ、いや、その、」
本音をごまかしようもなく、俺は長太郎の腕の中で口ごもる。
こ、この状況だってすっげー萌えるのになーっ。
恋人ってどういうことだー?
あーもう。まさか俺が長太郎の恋愛対象に入るなんて思いもしなかったから、どうしていいのかさっぱり分からない。
でも、長太郎がそれほどまでに俺を慕ってくれていたなんて、信じられないくらい嬉しい。こんなワンコ属性イケメン天使が、俺ごとき妄想野郎を、この世で一番愛してくれるというのだ。俺が一人占めしても良いということだ。頭が沸騰しそうだぜ。
でも恋人って、どうすりゃ……。
キスも求められたし、俺は女の代わりをするということか?
「あ、そ、そういうんじゃないんですけど……」
でも現に今押し倒してるじゃねーか。
それに、キスしたら次はエッチしなきゃなんねーよな?
「い、いやその、えっと、それは自然の流れで……」
告って早速ヤるのが自然の流れなのか?
よく知らないがさすがに早いと思うぞ。
「そ、それはごもっともでして、はい」
まぁ、天使が案外ムッツリスケベだったのは驚いたが、思春期男子なので良いとしよう。
だがしかし、俺も男だ。
世の中には同性同士のカップルがいるのは知っている。
でもエッチというのはおしべとめしべが揃って成り立つものだし、俺じゃ長太郎のムラムラをすべては解消できないよな。
やはりそこは必然的に浮気相手が発生するのか?
「その辺は大丈夫ですよ。男同士でもお尻でできますから」
「け、ケツ?」
無意識なのかなんなのか、長太郎の手が太ももを撫でてくる。
「えっと、後ろの穴を、その、代わりに……」
「な……っ」
そんな方法なのか!?
っていうかなんでそんなアブノーマルなことを純白な天使が知っている!?
俺の顔が引きつってしまったのか、長太郎が慌てた様子で弁解しはじめた。
「お、俺、宍戸さんときちんと愛し合いたかったから、その……。だ、大丈夫ですよ!この方法は普通に女の子ともしますからね」
お、女の子と……おまえが?
「え?そ、それは違いますよっ」
もしかして、すでに童貞卒業してたのか。
「え、あ」
ただの人間になり下がってたのかよ!
「えええ、ご、ごめんなさい!」
「あっ、ちっ違うっ!ちょっと早いなとか、すげー男だなって意味だよ!」
俺の天使が汚されていた。
信じてたのに。
「汚……」
「あーっ!!!聞くな!違う!俺はそんなこと気にしたりしない!!」
「宍戸さん……ご、ごめ、なさ……」
さっきまでオオカミのようだった長太郎がしょんぼりしてしまっている。
俺、なんでこんなにショック受けてるんだ?
自分自身が分からない。
ただひとつ言えることは、俺の長太郎への愛が思った以上に重度で偏ったものだったらしいということだ。





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