◇誕生日 | ナノ



18

慌ててきつく目を閉じた。
もう二度と長太郎と笑い合えないのだろう。
頭の中が暗く深い絶望感に支配される。
すると顔を覆っていた腕を外された。
そのまま唇に、温かくて、ふにっと柔らかいものが押し付けられた。
「……!?」
びっくりして目を開けると、ピントが合わないくらい近くに長太郎の顔があって、俺と唇がくっついていた。
「んっ……ふがっ!」
なに!?
なんで!!?
「んぐっ……ちょっ、離れろください……はっ!?」
なんのサービスだ!!?
最後だからって、餞別のつもりなのか!!!
「どっちも違いますって。……好きだって分かってくれないからです。宍戸さんの、ばか」
…………か、かわいい……。
とうとう忍足の得意ジャンルまで……。
「ちゃんと聞いて下さいっ」
「ご、ごめんっ!聞いてる、聞いてるけど。頼むから無視してくれ」
驚いた拍子に、俺は長太郎と会話できている。
で、でも、え?
なにこれ?
どういうこと?
「俺、宍戸さんが好きなんです」
好きって、もしかして、『アッー!』ってこと?
「『あーっ!』て何ですか?」
長太郎ってホモなのか?
「……分からないです。でも性別とか関係なく、宍戸さんが好きなんです。俺だって宍戸さんの肌に頬ずりしたり、唇にちゅってしたりしたいです」
いつから聞いてたんだよ!
ああ、もう死にたい……。
「余計なこと言ってすみません。でも、俺達、同じ気持ちってことですよね?」
同じ?
「だから、両想いって思っても、いいんですよね?」
え……両想い?
「びっくりさせたならすみません。だけど、ああ。俺、うれしくて。もう一度キスしてもいいでしょうか」
頬を赤らめた長太郎の顔が接近してくる。
そのまま俺は天使と二度目のキスをした。
両想いってなんだ。
えっ、俺ホモだったの?
分からない。
そういうふうに考えたことはなかった。
でも、俺は長太郎を愛している。
「宍戸さん……嬉しい……」
「だっ、き、聞くなって!」
俺が抵抗しようとすると、腕を押さえつけてくる。
さらに唇を割って舌が入ってきてしまう。
なっ、なんだっ、ぬるぬるする……!
えええここここれってデデデディープキス!?
まずい!
心の声が筒抜けのまま、理性の効かない状態になるのはまずいぞ。
っつーか!!
俺、長太郎と恋人になることOKしてないんだけど!!?





Text | Top