17 だからふくらんでるほっぺたツンツンしたいなんて思ってしまう。 本人を目の前にこんな妄想して、ウジ虫野郎もいいとこだぜ。 落ち込む……でも長太郎可愛い、好き。カッコよくて仕方ない。わけがわからない。 「茶化さないで下さい、もう」 長太郎はぷんぷん顔をやめて唇を噛みしめる。 怒った顔もカッコイイし可愛いなんて、長太郎ぐらいだよな。 「褒めたって許しませんからね。ちゃんと話しましょうよ、宍戸さん。声に出して」 無理。頭ぐるぐるしてるし、何をどうやって弁解すればいいのかわからない。 変態でごめん。もう二度と近寄らないからって言えばいいのか? 俺、やだよ。 こんなキモくて変態なのに、長太郎に嫌われたの確定なのに、それでも隣にいたいって思ってしまうんだ。 もう取り返しのつかない状態なのに。 誰かにこの座を取られてしまうのは嫌だ……。 彼女だって、本当は作らないで欲しい。やだ。 「嬉しいです。宍戸さんは、そういうワガママは絶対に言わない人ですからね。でも、声に出してほしいです。俺が宍戸さんの心の声に返事をするのは簡単だけど、俺は宍戸さんの言葉で聞かせて欲しいんです」 言葉……? 無理だよ。なんて言えばいいんだよ。 なんて話せば。 口を開こうとしたら、唇が震える。息ができない。 「宍戸さん」 肩に置かれていた長太郎の手が、優しく頭を撫でる。 それから頬に降りてきて、指先が唇をなぞった。 「名前を呼んでよ、宍戸さん」 喋り出したら、俺と長太郎は終わりだ。終わりが始まる。 長太郎の前から立ち去らなくちゃならないんだろ? そんなのできない。 「だから、そんなことしなくていいんだよ、宍戸さん。俺は宍戸さんに名前を呼んでって言ってるだけじゃないですか。それともこのまま脳内会話、続ける気ですか」 鷲掴みされた肩を押されて、俺の身体はシーツに沈んだ。 宍戸さんとまた名を呼ばれる。 苛立っているのか語尾がキツイ。 頭の中がぐちゃぐちゃになっていく。 これ以上汚い自分を見られたくなくて顔を隠した。 そんなことをしたところで、心の中は丸見えだというのに。 「……宍戸さん。ねぇ、宍戸さん。俺から離れないで」 「ちょ……長太郎、ごめん。……俺、気持ち悪くて……。長太郎が……好きなだけなんだ。これ以上……め、いわく、掛けない、絶対」 だから、……嫌いにならないでくれなんて言えない。 じわ、と涙腺が熱くなる。 前 次 Text | Top |