◇誕生日 | ナノ



16

普段、無骨で硬派でテニス命で通してる(はずの)俺が、実は同性の後輩にメロメロのデレデレなんて、墓にまで持って行きたいくらいの重大な秘密だ。
テストで赤点取ったのが母さんにバレたのとは訳が違う。
いっそ死んでしまいたい!!
いや、もう公開処刑が始まっていたな。ははは。
「だっダメですよ、死ぬなんて!」
いやもうこのまま死ぬしかない。
長太郎に、バカとかアホとか激ダサとか言って、それは自分じゃねーか。
長太郎は天使みたいに優しくて、誰が見てもイケメンで、こんな俺をまだフォローしようとしてくれる。
そうだ。そもそもこんな変態クソ野郎な俺が隣にいること自体、間違ってたんだよな。
俺、恥ずかしい奴だな。
俯いてシーツを見つめていると、不意に視界がじわ、と滲む。
これだけ散々好き放題しておいて、長太郎に気色悪いなんて言われたら、生きていけないなんて。都合が良いにも程がある。
「俺、そんなこと思ってないですよ。嬉しかったですよっ?」
そんな社交辞令はいい。
どこの世界に四六時中自分に対する変態妄想を聞かされて楽しい奴がいる?
てか、いつからだよ。
俺の誕生日祝うために、気持ち悪いのをずっと我慢してたのか?
「いや、本当に我慢とかしてないです!ずっと黙っててごめんなさい……。言った方がいいのかなって思ったんですけど、そしたら宍戸さん、俺と絶対一緒にいてくれないと思って言えなかったんです」
長太郎は強張る俺の肩に、そっと手を置いた。
「ウソ……。本当は、それだけじゃない。宍戸さんの素直な気持ちを聞きたくて、俺が宍戸さんから離れたくなかったんです」
んなバカなことがあるかよ!
「あるんです!俺は宍戸さんがツンデレだろうが、あけっぴろげな変態だろうが、そばにいたいと思ってしまうほど、あなたが好きなんです!!」
あ……あけっぴろげな変態……事実だ。遠回しに罵って、俺がもう二度と長太郎に近づけないようズタボロにしてくつもりなのだろうか。
「違います。もう、また告白スルーしちゃうし。宍戸さんは俺が好きなくせに、俺が宍戸さんを好きなことはなんで無視するんですか?」
ぷんすかしてる長太郎、可愛い。
「話聞いて下さいよ!」
だって可愛くて。
あと現実逃避しないと気絶しそうだし。





Text | Top