13 「ふふ。分かってはいるんですけどね、宍戸さんが仕方ねーなって許してくれるから離れられないんです。ごめんなさい」 長太郎……そんな謙遜するこたねーよ! どんだけ性格まっすぐなんだよ、もう。 俺はおまえだから四六時中そばにいて欲しいし、他の誰かと仲良くしたいとか思わないし。 だからその、この想いは軽いもんじゃねーんだよ。 「俺も長太郎の誕生日には同じように喜んでもらいてぇな」 「えっ。お祝いしてくれるんですか!?」 「そりゃ、するって」 「わ、わぁ。わあぁぁ、嬉しいです〜!」 「つーか、今すぐ礼ができたらいいのに」 「え?」 俺、喜んでるの伝わってるかな。 こういうのうまくできねーんだよな。 口下手だし。 表情の起伏も乏しいし。 ありがとうって伝えたい。 好きだって伝えたい。 何したらいいかな。 「あ……マッサージしてやろうか?」 「え?」 って俺のばかあぁぁぁあ!! なぜ思考が初めに戻った!?? 緊張感が高まりすぎて変態思考にシフトしてしまった! いつもなら通常運転と言いたいところだが、それは脳内の話であって、言葉にしてはならない禁断の領域だ! 今の一言ぐらいならギリセーフかっ!? あぁぁぁ心が疾しすぎて一般的な判断できねーよ。 そうじゃなくって感謝の思いを伝えたかったんだろうが! なんらかの形でお礼したいとは思ったけど、これはねーよ!! 「マッサージ?」 「っていうのはウソで」 「ぜ、ぜひお願いします!」 「……へっ……?」 「あ〜その、今日の練習、日吉が張り切っちゃって結構キツかったんですよ」 「あ、そーなんだ」 ……あれ? マジですんの? 「もちろん交代制ですよ」 「こうたい?」 「後で俺も宍戸さんにしてあげますからフェアでしょ」 「……もっ、もちろん!先輩の俺だけ働かせようなんて真似はさせないぜっ長太郎!」 「はい」 なんの宣言だよ、俺のバカ。 お礼だから、長太郎も働かせる意味ねーしな……。 いつ不審な目で見られてもおかしくないぞ。 でもなにこの展開。 やばいって。 俺、一生分の幸運使い果たしてるよなこれ。 「えーと、ベットに寝れば良いですか?」 「そうなるな」 鼓膜の奥が自身の脈拍音でいっぱいになる。 俺は震える手脚を叱咤しながら、どうにか長太郎の腰に跨った。 アアァァあああぁっ、ちょちょちょ長太郎の背中ぁぁああアアアッ――……!!! 前 次 Text | Top |