◇誕生日 | ナノ



13

「ふふ。分かってはいるんですけどね、宍戸さんが仕方ねーなって許してくれるから離れられないんです。ごめんなさい」
長太郎……そんな謙遜するこたねーよ!
どんだけ性格まっすぐなんだよ、もう。
俺はおまえだから四六時中そばにいて欲しいし、他の誰かと仲良くしたいとか思わないし。
だからその、この想いは軽いもんじゃねーんだよ。
「俺も長太郎の誕生日には同じように喜んでもらいてぇな」
「えっ。お祝いしてくれるんですか!?」
「そりゃ、するって」
「わ、わぁ。わあぁぁ、嬉しいです〜!」
「つーか、今すぐ礼ができたらいいのに」
「え?」
俺、喜んでるの伝わってるかな。
こういうのうまくできねーんだよな。
口下手だし。
表情の起伏も乏しいし。
ありがとうって伝えたい。
好きだって伝えたい。
何したらいいかな。
「あ……マッサージしてやろうか?」
「え?」
って俺のばかあぁぁぁあ!!
なぜ思考が初めに戻った!??
緊張感が高まりすぎて変態思考にシフトしてしまった!
いつもなら通常運転と言いたいところだが、それは脳内の話であって、言葉にしてはならない禁断の領域だ!
今の一言ぐらいならギリセーフかっ!?
あぁぁぁ心が疾しすぎて一般的な判断できねーよ。
そうじゃなくって感謝の思いを伝えたかったんだろうが!
なんらかの形でお礼したいとは思ったけど、これはねーよ!!
「マッサージ?」
「っていうのはウソで」
「ぜ、ぜひお願いします!」
「……へっ……?」
「あ〜その、今日の練習、日吉が張り切っちゃって結構キツかったんですよ」
「あ、そーなんだ」
……あれ?
マジですんの?
「もちろん交代制ですよ」
「こうたい?」
「後で俺も宍戸さんにしてあげますからフェアでしょ」
「……もっ、もちろん!先輩の俺だけ働かせようなんて真似はさせないぜっ長太郎!」
「はい」
なんの宣言だよ、俺のバカ。
お礼だから、長太郎も働かせる意味ねーしな……。
いつ不審な目で見られてもおかしくないぞ。
でもなにこの展開。
やばいって。
俺、一生分の幸運使い果たしてるよなこれ。
「えーと、ベットに寝れば良いですか?」
「そうなるな」
鼓膜の奥が自身の脈拍音でいっぱいになる。
俺は震える手脚を叱咤しながら、どうにか長太郎の腰に跨った。


アアァァあああぁっ、ちょちょちょ長太郎の背中ぁぁああアアアッ――……!!!







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