12 「これオーダ……お店で買う時、宍戸さんが付けたらどんなに似合うかなって思い描いて楽しかったんです。だからぜひとも宍戸さんが付けるところ見てみたいんです!」 「う、うん」 うぅ。 仕方ない。 俺はなるべく指紋が付かないようにそっと箱から取り出す。 そしてアジャスターを、ア、アジャ、アじゃすた、を、 「……俺、付けていいですか?」 「ふ、普段しないからできねーのっ」 「そうでしたか。じゃあ、次付ける時も遠慮なく俺を呼んで下さいね」 「おーそうするかな」 いやそんな下僕みたいなこと出来ないっての。 でも長太郎のワンコ属性なところも好きすぎる俺はぞくっとしてしまう。 くるりと長太郎に背中を向けると、首元にそっとクロスが降りてくる。 少し身体が近くて他人の熱を感じる。 時々、首筋に指先が触れると電流が走ったように肩が竦んだ。 部活中なんて、触れ合う機会はやまほどあった。 でも今のこの状況は、何もかもがまるで違った。 俺は萌えを感じていたが「なんだかくすぐったい」と言う方がしっくりくるような、新しい種類の繊細な萌えだった。 「できました。ね、こっち向いて、宍戸さん」 甘い声に誘われて、シーツの上であぐらをかいたまま半回転すると、大きな目がぱちくり瞬いた。 「か」 「……か?なんだよ?」 「っこいいです、宍戸さん。すっごい、似合う。想像以上」 「そ、そうか……?ならよかったぜ」 何にそこまで驚がくしているのか判りかねるが、社交辞令じゃないっぽい。 長太郎は口元を両手で覆って、なにやら感動しているようだった。 いま自分の首に、長太郎の首元に揺れているものと同じものが存在するなんて、とても不思議で、とても照れくさい。 すぐ着けちまったのはもったいねーって思ったけど、長太郎が喜んでくれたならこれで良かったのかもしれない。 きっと、あの笑顔は今しか見られないものだった。 うれしい。 さっきまではこのクロスを飾って鑑賞したいと思っていたのに、今はもう絶対に外したくないなんて思っている。 「長太郎、こんなすげえプレゼントくれて、マジでありがとう」 「そんな。俺の方こそ、受け取ってもらえて嬉しくて、今死んでも後悔しないくらいですよ」 「バカ言うなよ、もう」 か、かわいいー。 台詞がクサすぎるのに似合いすぎててかわいいぜー。 こっちが死んじまう。萌えすぎて。 「長太郎。今日はいろいろありがとう。俺の趣味に合わせて遊んでくれたりとか、こんなカッコいいプレゼントくれたりさ」 「いつも傍にいてくれるお礼ですから」 「そ、それなら俺だって」 「いいえ。宍戸さんと仲良くなりたい人なんてたくさんいます。なのに俺が四六時中つきまとうから」 「そんなのいねーよ。それにそんなふうに思ったことないし」 前 次 Text | Top |