◇誕生日 | ナノ



09

それからしばしゲーセンを楽しみ、ケーキ屋に寄り、長太郎のエスコートタイムは終了した。
そしてついに鳳家へお泊りだ!
ここから先はニヤけたりしないよう、ますます要注意だぜ。

夕食の席では長太郎の母ちゃんとばあちゃんも俺の誕生日を祝ってくれた。
宍戸君のお母様たちに悪いわぁと言われたが、俺ももうそんな子どもじゃないしな。
むしろ可愛い天使と過ごせるなら誕生日でもクリスマスでも、地球が滅亡する日でもいの一番に飛んでくる。
なんて言うとさすがの聖母達もドン引きするだろうから黙っておく。

そして部屋でゲームをし、ケーキを食べ、夜も更けた頃、風呂の時間がやってきた。
入浴は別々。
あの跡部家とも親交のある鳳家は、俺のような中坊ゲストに対してもちょっとしたホテル並みのおもてなしで「男の子同士だから一緒に入っちゃいなさい☆」なんていうラッキースケベ展開……いやいや、子供の外泊あるあるであり、母親の怠慢的な展開にはならなかったのだ。
だから、せめて長太郎の浸かったあとのお湯を堪能したかったのだが、お客様だからと一番風呂を勧められて断り切れず。
せっかく長太郎から染み出た汗やらナニやらを味見……いやいや、匂いを確認するだけ!
もちろん後でいいと食い下がってはみたんだぜ?でも長太郎は顔を真っ赤にしながら絶対ダメです!と最後の方は叫ぶように拒否していた。
いつも爪の先まで綺麗だと思っていたが、そういうところには想像以上に厳しく気を使っているようだ。
この完璧なまでの清潔感も、汚れのない天使というイメージにぴったりだ。
そういえば部活の時も、真っ白なタオルの替え何枚も持ってたっけ。
それを、俺が汗拭きたいなって思うタイミングぴったりに差し出してくれたり……―――あれ?タオルの共用はいいのか?
潔癖症じゃないのか??なんだ???
まぁとにかく、俺なんかテニスコートとか部室とか平気で寝っ転がるし、泥だらけの傷だらけだし。
テキトーにしてくれていいのにっつーかマジで風呂あとで入りたかった!!

というわけで、一番風呂をいただいた俺は寝間着にきがえて長太郎の風呂上がりを待っている。
ひとりボーっとしていると、さきほど思いついた名案が頭の中で膨らんでくる。
長太郎の疲れを癒すためにベットでマッサージをしてやるという妄想。
力いっぱいぐいぐいやって、長太郎の呻き声だか喘ぎ声だか溜め息だかわからないものを堪能するか。
適度な心地良い強さでほぐして、脱力したような、昇天したような、安らいだ表情を堪能するのか。
果たしてどちらが正解ルートだろう。
俺のために用意された敷布団を飛び越えて、長太郎のベットにダイブする。
「すぅー……、はぁー……」
長太郎の匂い。たまらないな。
もしも――もしも、誕生日プレゼントとして使用済みシーツか枕カバーをあげると言われたらどっちにしよう。
どうしよう。きっと選べない。





Text | Top