08 「もっと飲み物いるか?」 「いえ。落ち着きましたから」 長太郎が無理したように笑う。 うーん……。 「……やっぱ疲れてんだよ、長太郎」 「はい?」 こりゃもう帰宅した方がいいかも。 「そ、そんなことありません!体力には自信あります」 「え?」 体力って…………長太郎のえっちって、長くてくどそうだな。 「いやああああのぶぶぶ部活はいつもどおりでしたし!おっ俺は練習の成果見せたいです!!」 くどいけど、うまそう。 だってほら、デートもこやって至れり尽くせりだしさ、あとピアノ弾く手捌きすげーんだよ。 きっとえっちの時も……ああ、ダメだ。 長太郎の未来の彼女のこと考えると妄想が下世話な方に行っちまうんだよな。 そんなんじゃなくて、もっと長太郎のいろんな魅力に触れたいのに。 性欲と長太郎への純粋な愛をごっちゃにしちゃダメだろ、俺! 長太郎萌えに使用される脳内スペースは聖域なんだ。神域なんだ。 性欲なんて汚ねーもん、持ち込んじゃいけねえ。 「シャツ濡れてるぞ」 ったく、昨日抜いたのになー。 「えっ……」 でもやっぱシャツ透けてるとこは見逃せねー。 「う……、あ…………、……ご、ごめんなさい!!」 ええ?急に深々と謝られた!? 鳳家では飲み物をこぼすと、はしたないときつく叱られるのだろうか。 「いや、別に俺はいいけど、」 「俺、本当……ごめんなさい。最低、です……」 「いや」 むしろ最高だろ、この色気! ってか風邪引かないか、ちょっと心配。 「すぐ乾くと思うので……っ、宍戸さんが嫌じゃなければこのままゲームしたいですっ。ほんとすみませんでした!」 ぺこりと頭を下げて、それから長いまつげに囲まれたまんまるの瞳が、上目遣いでこちらを見上げる。 「本当の、本当に、宍戸さんと、お誕生日を楽しくお祝いしたいだけなんです……」 ううう、エサを待つ犬っころみたいで可愛い……。 「ったく、何言ってんだよ!」 それ以上に恥ずかしいことばっか考えてる最低な変態がおまえの目の前にいるっての! 「どんどん失敗しろ。大丈夫だ、俺はすげー楽しんでるぞ」 あー、長太郎の口元から垂れてるジュース舐めたい。 ぺろぺろ。 「……よかったぁ……」 長太郎は口端を指で拭うと、照れ隠しのように首をかいて俯いた。 うん、やっぱり、この色っぽい仕草。 たまらん。 こんなアクシデントさえ様になってしまうんだから、長太郎は正真正銘のハンサムってやつだな。 前 次 Text | Top |