06 「宍戸さん……あの……」 長太郎が怪訝な顔をして俺を見つめている。 いかんいかん、せっかく二人っきりのデートなんだから、思い切り楽しまなくちゃだめだってな! もし来年長太郎に彼女がいたり、いや、そもそも中学生と高校生になって距離ができたりしたら、こうして会えるかも分からないんだ。 だから今日は。 俺の中では最初で最後の、ラブラブデートなんだ! 「し、宍戸さん!ゲーセン行きましょう!ラブラブデートの続きです!!」 「はああ!?あんだとゴルァ!?男同士でデートとかほざいてんじゃねーぞ!どこぞの丸眼鏡の色ボケかよ!激ダサだぜ!!」 「へぁ!?うぅ、ごめんなさい……っ」 おいぃ! 俺のダセェ台詞なのに長太郎が言うと萌えしかないぞ! どうなってんだ! くっそ。ポロッと爆弾投下してくれるぜ。 長太郎マジ天使。 ちゅっちゅ。 放課後のゲーセンはにぎわっていた。 俺と長太郎は目的のレーシングゲーム機にたどり着く前に、店内の熱気で少々ぐったりしてしまった。 小銭の両替に行って来ると言った長太郎を待って、レースカーの運転席を模した椅子にもたれ掛かる。 俺は授業が終わってから自習していただけだが(一応受験生だからな)県大会常連のテニス部で部活に励んできた天使はたいそうお疲れだろう。 誕生日のお祝いだっていろいろエスコートしてくれんのは嬉しいけど、早めに切り上げて自宅で羽根を休ませてやらなきゃなー。 ……。……そ、そうだ。身体凝ってるだろとか言って、ベットでマッサージしてやろうかな。 絹肌に筋肉に触り放題だ。 薄着にさせて、腹チラしちゃったり……きわどいところのシルエットが見えたり……ゴクリ。 って俺は長太郎をどうしたいんだよ! たまに我に返ってみる。 でもわかんねーよ。 妄想に制限はない。いかなることも、それが萌えるか、萌えないか、ただそれだけだ。 「宍戸さん、お待たせしました!」 はいっと頬に冷たいものを押し付けられて、俺はヒィッと叫んだ。 「ばか、冷てぇだろ!」 ひどい妄想ばっかしてるから、天罰が下ったかと思ったぜっ。 「ふふ、のど渇いたでしょ?」 睨みつける俺へ、爽やかに氷をシャリッと鳴らして、長太郎は微笑んでみせた。 あ?併設されているカフェでアイスコーヒーを買ってきてくれたのか!? え、え、え。 さりげなく手渡されちまった。 ちょっ、14歳でフェミニストすぎるだろが! 「あ。サ、サンキュ!あっと、財布は……」 「いいえ。お誕生日特別サービスですよ、お客様」 あ、あざといぃぃい〜〜!!! 前 次 Text | Top |