05 「つか夕飯は?」 問いかけに対し、長太郎は即座に自信たっぷりな顔でキリッ!とした。 「母さんに宍戸さんの好物づくしでお願いしてあります!」 「まじかあぁ。俺、長太郎の母ちゃんの飯好きなんだよなぁ。すっげー美味いし、うちじゃ食えないのばっかだもん。楽しみだぜ」 「ふふ。それ聞いたら泣いて喜びますよ」 俺の言葉にそんな効力あるわけないだろ。 たかが先輩を持ち上げすぎ。 長太郎マジ天使。 「うちの家族はみんな宍戸さんが大好きですからね」 それって長太郎も含まれてんのかよー? 「もちろん、俺もですよ」 「ばぁか」 俺の長太郎への想いは、鳳家全員の好きを集めても足りないくらいだ。異論は認めない。 「ありがとうございます。それからケーキ買って、宍戸さんを我が家へご招待しますね」 ん?なんで罵倒からのありがとうございます? 小首をかしげたところで、長太郎の両手が俺の左手を包み込み胸のところまで持ち上げた。 「素敵な誕生日の夜にしましょうね?」 鏡のように同じ方へ小首をかしげて、微笑んだ。 長太郎の頬は薔薇色で、瞳は蜂蜜色がとろんと蕩けてしまいそうに弧を描く。 ……きゅん。 きゅうぅぅぅんっ! こりゃケーキ食う前に胸やけ起こしちまうかも。 CDショップでお目当てのアルバムを視聴したら最高にイイ曲だった。 幸せな誕生日の日に、こんなイカした曲に出会えるなんて! でも、今日のために色々買いそろえたら(普段使いより高めのワックスとか、母さんが買った3枚千円のものとは違うダサくないパンツとか、今思うとはしゃぎ過ぎたと反省するようなものばかりだ)今月の小遣いを使い果たしてしまったので、買うのはまた後日。 そこですかさず長太郎がプレゼントしたいと提案してきたが、どうせもう他に用意してあるんだろうと言ったら目が泳いだので遠慮しておいた。 ハッタリだったのに外さないなぁ、長太郎め! プレゼントの二重攻撃とか、どこまで王子キャラなんだってな。 鳳君カッコいいってきゃっきゃ言ってる女子達に、長太郎って中身まで王子様みたいな奴なんだぜ知らねーだろ!ってドヤ顔で自慢してみてーなぁ……。 いや、そんなことをしたら長太郎のファンを増やすだけだから、しないけど。 ほら、先輩って立場じゃ、いつまでも長太郎のそばにいられないじゃん。 タイムリミットは長太郎に女ができてしまうまで、だろうな……。 いくら俺が隠したところで、黙っててもイケメンだから、いつその時が来てもおかしくはないんだけどよ。 それまでは一秒でも長くこの座にいたいから、下手な真似はしない。 まぁ、最後の悪あがきだ……。 辛いがそれが現実なんだ……。 とか言いつつ、辛すぎるからあんまりそのことは考えていなかったりするけどな! 前 次 Text | Top |