◇誕生日 | ナノ



04

「あの、まずは、クールダウン……いえ、CDショップに行きましょう」
なんで?
早く長太郎の部屋の匂いすんすんしたいんだけど。
「ふえぇっ――えええ、えっとですね!こ、この前、宍戸さんが気になるって言ってたバンドのCD見つけたんです。しかも、コーナーが作られててアルバム視聴できるんですよ!」
「うっわマジで!?やった!」
お前はなんてデキる後輩なんだー!
これは長太郎んち行ったら頭わしゃわしゃ撫でくり回してやろう。
ってそれじゃ俺が嬉しいだけか。へへへ。
「へ、へへっ。あっ、そのあとはゲーセン行きません?」
ゲーセン?
長太郎、音うるさいから嫌だって言ってたのに。
なんでもあの騒音が全部ドレミで聞こえちまうらしい。絶対音感っていうやつだ。
「俺は平気です。だって、宍戸さんの好きって言ってたレーシングゲーム、内緒で練習したんです。今日一緒にするために」
「ぶっ」
バカヤローッ!
俺を萌え殺す気か――!!
「ぶぶぶか、部活さぼってんじゃねーぞコラぁッ!」
「ちちち違うッス!部活の後とか、休日に来てましたからっ」
「ならいいんだけどよ」
はぁはぁ……内緒で練習とか健気すぎんだろぉぉ。
それ以上従順になってどうするつもりだこの野郎!
犬耳付けちまうぞ!もふもふ!
ふぅ……、ごめん、いきおいで喝入れちまったな長太郎。
でもよ、そうしないと心臓が爆発しそうだったんだ。
「……あの、ただし対戦は初めてなので、宍戸さんが楽しめるかどうか、微妙なんですけどね」
チッ、こんなイケメンが一人でゲーセンふらふらしてただと?
ナンパされんだろうが。
危機感持てよな。ばかばか。
「なんだかご心配おかけしたみたいで、すみません」
「別に」
「ここに通っているあいだ、特に誰かに絡まれたりしてませんし、ナンパもお断りしました」
「へえ、って自慢かよ!激ダサだな!」
「えへへ」
良かったあぁ!
俺の天使は無傷で純白なままだぞ!
ナンパ仕掛けたヤツ、破滅への輪舞曲決定な。






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