famous 3 しかし瞼の裏に視線を感じる。 (俺の顔を凝視するんじゃねぇよ、落ち着かないだろ) それところが、手でぺたぺたと触ってくる始末。 気の短い俺は早々に我慢しきれなくなり、目をパッと開けて長太郎を睨みつけた。 「触るな、長太郎」 「宍戸さん、肌きれいっすね」 「撫でるな」 「きれいー、ツヤツヤ」 「…はあ?どこが。おまえのがきれいだろ、一流モデルさんよ?」 繋がらない会話についまともな返事を返してしまった。 結局、こいつの思い通りになってる。 ちくしょう。 「俺は一応、お手入れ欠かしてませんけど。…あぁ、ほんとにきれい」 俺はなんでも体当たりだから無茶して怪我するのもしょっちゅうだし、肌なんて傷だらけだ。 長太郎って時々、いや頻繁に、どうしてそういう発言に至ったのか分からないようなことを言う。 「……一日中俺なんか触ってて楽しいか?」 そう、本当に。 飽きることなど知らないように、俺に触れるのをやめないんだ。 なんで俺なんか。 ……なんで俺、好きなの? そんなこと聞けないけど。 「…幸せな気持ちになるんです。俺ね、宍戸さんといるだけで心が晴れるんですから。…どんなに忙しくて何か見失いそうになってても、宍戸さんがここにいるんだって思うと自分に力が湧いてくるんです。あなたが俺を認めて受け入れてくれるから、俺はこのままでいいんだなあ、仕事頑張ってていいんだなあ、って思えるんです。会う度に好きになって、宍戸さんも好きでいてくれて、本当に嬉しいから」 質問の答え以上の長太郎の言葉に、温かい何かが身体に浸透したような気がした。 それは、長太郎の今の気持ち。 それは、俺の聞きたかった言葉。 「ふうん」 同じなんだ、俺と。 長太郎に会えるとすごく満たされたような気持ちになれる。 俺、このままでいいんだ、どんなに時間と場所を離れても、おまえは必ずここに戻ってくるんだ。 俺が好きな笑顔を見せて安心させてくれるんだ。 そう、感じさせてくれるから。 「痛ぇよ、長太郎」 「やだ。離したくない。好き好き、宍戸さん」 長太郎は少し力を抜きつつも、ぎゅうぎゅうと俺を抱きしめた。 そっけない返事をしてやったつもりだったけど、どうやら緩んだ目元は隠せなかったみたいだ。 あんなに長い間会えなかったのに、もうなんだかホッとしてる。 なぁ、おまえもそうなんだろ。 心で問いかけただけなのに、その瞳には同じ気持ちが映っていた。 End. 前 次 Text | Top |