初恋リスク 3 それが俺の部屋で起こったのが1日前のこと。 そこにこうして再び二人きりでいるためか、昨日のことを引きずったまま甘くくすぐったい空気になっている(主に長太郎が) 「宍戸さん…宿題、終わりましたか?」 遠慮がちに指を絡めてくる長太郎に耐えきれなくなり、その手を引っ張って捕まえた。 クソ、長太郎のせいだ。もう我慢できねえ。 薄く色づいた唇にキスをすると、背中に腕が回されて小さく声が漏れる。 「好き、宍戸さん」 「ん」 今日もまた『俺を』包み込むように羽交締めてくる手をやんわりと解き、『俺が』抱きしめ直す。 長太郎はどちらにしても嬉しそうだ。 でも俺は違う。 こっちの方が自然だ。 想像通りなんだ。 「宍戸さん、その…昨日の…平気、でした?」 抱き合って、顔の見えない状態で、長太郎が尋ねてくる。 いきなり昨日のあのことが話題になって、俺は内心ドキリとした。 「……お、おう…」 「男に触られて嫌だとか思うことないですか?」 長太郎が俺の腰に手を添えながら、耳元に囁いた。 そろそろと触れる指がくすぐったい。 何考えてるんだ、長太郎。 でも耳元で響く舌ったらずの甘い声に小さく胸が騒ぎだす。 「ねぇよ。おまえなんだから、あるわけないだろ」 むしろ俺がそう思われておかしくない。 身長は172センチもあるし、身体の作りも成長期を越えつつあって骨ばって男っぽい。 ついでに目つきも悪くて性格も荒っぽい。 はたして男である長太郎が恋人にして見て触って楽しいものなんだろうかと疑問に思う。 俺は長太郎なら、男でも女でもいいんだけどさ。 「よかった」 「心配すんな。じゃなきゃこんなことしねぇしさ」 そう言って頬を撫でると、もう一度キスをした。 肩に銀色の頭が興奮気味に擦り寄ってくる。 「俺も。俺もね、宍戸さんとしかしたくないです」 性別は置いておいて、長太郎の素直さってかわいいと思う。 「たりめぇだろ」 「はい」 そして従順だしな。 俺が言うことやること絶対拒否しないもん、こいつ。 ……俺が何しても従うんだろうか。 なんて考えそうになって慌てて妄想をかき消した。 「ごめんなさい。痛いのも許してね?俺、宍戸さん大好きだから、絶対ぜったい、優しくするよ」 「うん」 いけねえな。 ゆっくり進んで行こうって決めたのに、俺ってやつは。 長太郎が意外に大胆だからつい便乗しそうになって。 しかも昨日のコトが生々しいうちにこの雰囲気は誘ってるとしか……――って、こんなこと考えてたらまたモヤモヤしてきたじゃねえか。 いや、好きだからこそ大事にしないと――って、 「は?」 「大好き」 「……じゃなくて。その前…なんて言った?」 ああ、と頬を赤くして目を逸らす長太郎。 緊張した面持ちになると小さい子供に言い聞かせる母親のように話しだす。 「あの。えっとね?俺、宍戸さんに負担掛けたくないからちゃんと勉強してるよ。けど、最初はけっこう痛いらしくて……辛いかもしれないんです。でも慣れれば気持ち良いんですよ!二人とも気持ちよくなれるんですよ!あ、だからその、俺は宍戸さんに」 「ハ……?」 負担? 痛い? ………誰、が? 「今日はちょっと…あー、そのっ……き、昨日より……もっと、いっぱい……というかいろいろ、さ、触ってみてもいいですか?できるだけ痛くしないからっ。ね?」 「ちちち、ちょっと待て!『誰が』痛い思いするって?」 慌てふためく俺をきょとんとした目で見上げる長太郎。 嫌な予感がした。 前 次 Text | Top |