◇大学生*社会人 | ナノ



Last blue night 7

「酔ったフリしてた、だと?」
「すみません…っ。宍戸さん、どんなにアプローチしても俺の気持ちに気付いてくれなくて…何の反応もくれなくて。それで、つい自棄になって…ざ、罪悪感は感じたんですけど…なんていうか、押し倒されて焦ったり、恥ずかしそうにする宍戸さんがすごく可愛くて虐め甲斐があっ…じゃなくて!その…なんていうか、癖に、なってしまって……」

長太郎は俺の目の前に正座して床に手をついて、土下座状態。
つまり、今までヤり方教えるだのなんだの抜かして押し倒してきたのは全部素面だったという。
怒りと呆れと半々で、俺は溜息しかでなかった。
こいつバカだなーと思ったけど、でも、俺だって相当バカじゃねぇの?
そうなら、押し倒されたらそれに乗っておけば良かったってことじゃん。
そんなことしたら引かれると思って、ずっとずっと耐えてきたのに!くそっ!
俺の眉間にしわが寄ったのを、これまでの嘘のせいで怒ったと思ったらしい長太郎は、大慌てでまたひれ伏した。

「ごめんなさい、宍戸さん。本当にごめんなさい!」
「激ダサだな…」
「はい、もう本当、そのとおりです」
「いや違くて。長太郎、顔上げろ」

ちょっと緊張したけど、俺は上体を起こした長太郎をすぐ抱きしめた。
そのままこっちからキスを仕掛けて、長太郎が俺の背中を抱きしめ返すと、思い切ってその口に舌を差し込んでみた。
一瞬長太郎は驚いて肩を揺らしたけれど、抵抗はしなくて、徐々にキスに応えてくれた。

「…激ダサってのは、俺もお前もだよ。早く正直になってりゃ、もっと早くこういうことできたんだぜ。それに、」

そこで言葉を区切ると、顔を見つめたまま、長太郎の背中に置いていた手をゆっくり腰へ滑らせた。

「お前がふざけて押し倒してきた、続きも。…ヤろうぜ?」

小首を傾げて長太郎のケツを掴むと「うぇ!?」と叫ばれた。
色気がないのはどっちだ、オイ。

「って、ええぇっ!?待っ…」
「だってよ、お前に中途半端に襲われてばっかで、ずーっと“待て”状態だったんだぞ、俺!あれやべーんだよ…すっげぇ堪えてたんだよっ…!」
「で、で、でも」

そこまで言っても長太郎は乗ってくれやしない。なんなんだよ。
…いや待て。キスは抵抗なかったし、まさか…そうか。長太郎はあのことが不安なんだな。

「分かってるぜ」
「え?」
「…俺が、入れられる方やってやるから…」
「………」

ちょっと恥ずかしくて俯いてしまったけど、こう言えば長太郎も心配ないだろう。それに、もしかして押し倒してくるか?なんて思ったんだけど。

「……」
「……」

微動だにせず絶句するってどういうことだ。

「――っで、で!でも!ダメです、絶対ダメです!いけません!」
「ぁあ!?何でだよ!」

俺はついに長太郎の襟首掴んでキレた。
でも長太郎も引かない。





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