◇大学生*社会人 | ナノ



Last blue night 6

「え、」
「携帯、出ないで。出ないで下さい。俺、その、俺が」
「え、長太郎?どうし…」

どういう意味なのか変わらなくて長太郎の顔を見返した。
すると、その瞬間キスされた。
ぎこちなく触れるだけのキスを。

「……」
「…あの、た、誕生日、おめでとうございます…っ!」

いや…誕生日なんかどうでもいいだろ。
今なにしたんだよ?
なんで今したんだよ?

「…おまえ…今、なに…」
「えっ、あ!ご、ごめんなさいっ!!…いけね、ホントに酒回ってきた…」

俺より数秒遅れて顔を真っ赤にした長太郎は、俺から身体を離すとあたふた謝って頭を抱え込んだ。
どういうことだよ。
なんでキスしたんだよ。
なんで。なんで?

「あの、俺、俺が、一番に祝わなくちゃと思って。おめでとうって。宍戸さんが言ってくれたから、だから叶えたかったんですけど、その、」
「なんでキスするんだ。なんなんだよ、今の。まだ酔ってるのか?」

酔ってしただけだったら納得できるけど、めちゃくちゃショックだ。
このどん底に落ち込んでるときに、また気持ちのないことされたってますます空しいだけだろ。

「酔ってるけど、だからじゃなくて!俺、宍戸さんのこと、好きなんです。キスとかしたい、っていう意味で、好きなんです。…す、すみません、勝手に…して…」
「……長太郎……正気か……?」

長太郎は唇を噛んで俯くと、こくん、と一度頷く。
その頬は、俺の勘違いじゃなければ、アルコール以外の原因で赤く染まっていた。
それを見たらもういてもたってもいられなくなって、俺は長太郎を抱きしめた。

「し、宍戸さん…!?」
「冗談とか、ふざけてんじゃないんだよな?酔って忘れるとかナシだかんな?」
「な、ないです、ありえないです!本気で宍戸さんが好きです」

長い腕がぎゅっと身体を締め付けて、あたたかな体温が伝わってくる。
俺も長太郎の身体に腕を回すと、長太郎は嬉しそうに溜息をこぼした。

「…俺の手じゃ鳥肌しか立たないとか、言わないで下さいね…」

なんだか憶えのある皮肉とともに、背中を抱きしめる腕が強くなる。
俺はもう幸せすぎて頷くことしかできなかった。





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