Last blue night 6 「え、」 「携帯、出ないで。出ないで下さい。俺、その、俺が」 「え、長太郎?どうし…」 どういう意味なのか変わらなくて長太郎の顔を見返した。 すると、その瞬間キスされた。 ぎこちなく触れるだけのキスを。 「……」 「…あの、た、誕生日、おめでとうございます…っ!」 いや…誕生日なんかどうでもいいだろ。 今なにしたんだよ? なんで今したんだよ? 「…おまえ…今、なに…」 「えっ、あ!ご、ごめんなさいっ!!…いけね、ホントに酒回ってきた…」 俺より数秒遅れて顔を真っ赤にした長太郎は、俺から身体を離すとあたふた謝って頭を抱え込んだ。 どういうことだよ。 なんでキスしたんだよ。 なんで。なんで? 「あの、俺、俺が、一番に祝わなくちゃと思って。おめでとうって。宍戸さんが言ってくれたから、だから叶えたかったんですけど、その、」 「なんでキスするんだ。なんなんだよ、今の。まだ酔ってるのか?」 酔ってしただけだったら納得できるけど、めちゃくちゃショックだ。 このどん底に落ち込んでるときに、また気持ちのないことされたってますます空しいだけだろ。 「酔ってるけど、だからじゃなくて!俺、宍戸さんのこと、好きなんです。キスとかしたい、っていう意味で、好きなんです。…す、すみません、勝手に…して…」 「……長太郎……正気か……?」 長太郎は唇を噛んで俯くと、こくん、と一度頷く。 その頬は、俺の勘違いじゃなければ、アルコール以外の原因で赤く染まっていた。 それを見たらもういてもたってもいられなくなって、俺は長太郎を抱きしめた。 「し、宍戸さん…!?」 「冗談とか、ふざけてんじゃないんだよな?酔って忘れるとかナシだかんな?」 「な、ないです、ありえないです!本気で宍戸さんが好きです」 長い腕がぎゅっと身体を締め付けて、あたたかな体温が伝わってくる。 俺も長太郎の身体に腕を回すと、長太郎は嬉しそうに溜息をこぼした。 「…俺の手じゃ鳥肌しか立たないとか、言わないで下さいね…」 なんだか憶えのある皮肉とともに、背中を抱きしめる腕が強くなる。 俺はもう幸せすぎて頷くことしかできなかった。 前 次 Text | Top |