Last blue night 4 呼びかけても返事はない。 顔を覗いてみると、規則的な寝息が聞こえ始めた。 「またかよ…」 一気に緊張が解けて、俺はベットの上に突っ伏した。 所詮酔っぱらいな長太郎はいつもこのあたりでダウンして寝てしまう。 しかも朝まで熟睡して、眼が覚めたらすっかり忘れてる。 最初の冗談のキスから、ずっとこんな夜を繰り返してきたから、これは確実。 部屋の時計を見上げると、時刻は23時をちょっと過ぎたところ。 あと1時間もしないで俺の誕生日になるっていうのに。 せっかく28日に会えたんだから0時になった瞬間、長太郎に祝ってもらえねぇかな…とかちょっと思ってたんだけど。 でも、現実はこんなもんか。 誕生日だからって奇跡が起こるわけはないのか。 「…もうヤダ、こいつ…」 俺は長太郎の横でがっくりうなだれる。 いつものベットと違うからか、長太郎はもぞもぞ動いて寝にくそうにしていた。 俺は長太郎が好きなんだよ。恋だ愛だの意味で。 そんな奴に中途半端に触られて、放置されてどうしろってんだ。 足元に畳んであった布団を乱暴に長太郎へかぶせると、俺はきつくなったジーパンをどうにかするため泣く泣くトイレに向かった。 * そのまま長太郎と顔を合わせるのも気まずかったし、酔い覚ましもかねて深夜の近所をちょっと散歩してから部屋に戻った。 時刻はまだ29日15分前。 なんだか時計の針の進みが遅く感じる。 「あれ」 玄関から数歩の廊下を歩いて静かに部屋へ入ると、長太郎がベットの脇に座っていた。 起きている。いつもは朝までぐっすりの長太郎が。 「起きちまったのか?」 「……宍戸さんがいないから、心配で」 「あ。ああ、悪い。酔い覚ましに外で散歩してきたんだ」 トイレでスッキリしてきた後に、顔も見れず。 ははは、なんて笑って誤魔化せばなんてことないだろうと思ったのに、いきなり怒鳴られた。 「危ないじゃないですか!」 「…え…」 長太郎は怒ったような顔をしたまま立ち上がり、俺の真正面にやってくる。 さっきまでフラフラしてた奴とは思えないほど、ちゃんと歩いて、まっすぐ俺を見て、俺の肩を掴んだ。 「こんな夜遅くに、何、考えてるんですか?」 「でも俺、男だし、別に」 「そういう問題じゃないでしょう。この辺りは街灯も少ないし、物騒じゃないですか。男だから大丈夫なんて保障はないんですよ。もっと危機感を持って下さい」 「……」 「心配したんですよ」 つーか。 お前はいつ起きたんだよ。いつも飲んで酔ったら、爆睡するくせに。 なに勝手に心配して、ムッとしてんだ。 知るかよ。 自宅の近所をちょっと散歩しただけだ。 たかが後輩にそこまで心配されて怒られる義理はない。 俺は飲みかけのビールをテーブルから取って、長太郎の横を素通りしてベット脇にドカリと腰かけた。 前 次 Text | Top |