Last blue night 1 明日、9月29日は俺の誕生日。 そして今日28日は、中学時代からの後輩長太郎が1日早くそれを祝いにやって来る。 同じ大学に通ってるし毎週会ってるんだけど「誕生日は特別に会いたい」だとか。 でも、実は俺はそれを聞かれるより先にジロー達と29日に会う約束をしてしまっていた。 友達の誕生日ってそんな張り切るもんか?よく分かんねぇけど、しょうがないからってことで、長太郎とは1日早く、28日に会うことになったわけだ。 日も暮れた頃、長太郎はバースデープレゼントとケーキを持って俺のアパートへ現れた。 まだ29日になってないのに自分のことじゃないのに、はしゃいで喜んで。 そうして、話も盛り上がり、酒も進んで、がっつりと酔ってしまっていた。 「そういえば、宍戸さんってまだ彼女いないですよね?」 長太郎はアルコールの回った赤い顔でニコニコ笑っている。 俺は口をぽかんと開けたまま、質問に答えられなかった。 気がつくと、テーブルの上に酎ハイの缶ばかりが空になって転がっている。 長太郎はビールは飲めない。 (いつのまに、こんな、飲んで…) 自分らしくもなく今日という日を楽しみにして、正直浮かれていたし、今この瞬間まですごく楽しい気持ちでいた。 なのにその一言で、幸福感がさぁーっと波のように引いていく。 放心してしまった俺の肩に、長太郎の腕が絡んできた。 「ほら…この前遊んだ女の子、どうなったんですか?」 「えっ?なんで知っ」 「忍足先輩から聞きましたよ。猛アタックされてたって。…なんで隠すんですかぁ?心配しましたよ〜」 「うわっ」 長太郎は悲しそうに瞳を潤ませて、そのまま俺にしがみ付いてきた。 こんな会話も続けたくないし、このままではまずい展開が予想できる。 俺は再びテーブルの上の空き缶を見て不安に苛まれた。 あ、長太郎、ワインのボトルも空けてんじゃねえか!おいおい…。 俺は意を決すると、長太郎からそっと身体を離した。 「べ、別に隠してないって。あれは、ほら。忍足が勝手に紹介してきて…遊びはしたけど、告白は断ったから…」 「本当ですか!?」 「おう…」 「じゃあ、また俺とテニスしてくれますよね?」 「おう」 「じゃあ、まだ童貞な宍戸さんに、またいいこと教えてあげますね」 「おう。えっ!?どっ…いや待て!そういうのはいい!マジで…ちょ、長太郎っ!」 あっという間に引きずりあげられて、二人分の体重を受けてベットが大きく軋む。 見上げれば、酒のせいで顔の赤い長太郎が吐息の届く距離で微笑んでいる。 やばい。もう手遅れだ、これ。 長太郎はゆっくりと左右に首を振った。 「大丈夫です」 「ダメだって…っ」 大丈夫かどうかは俺が決めるとこだろ!? でも長太郎の顔が接近してくると、俺は反射的に目を閉じてしまう。 あぁ、今日はこうならないようにしようって気を付けてたのに。 何やってんだ、俺…。 前 次 Text | Top |