Last blue night 8 「宍戸さん、初めてでしょう?」 「おう。前も後ろも初めてだよ!」 「そんなはっきり…。いえあの、だから優しくしてあげたいんです。でも今日これ以上したら…俺、歯止め効かなくなりそうなんで…」 長太郎は俺の目を見つめながら襟首掴んでる俺の手を握り返してきた。 俺は手を緩めない。緩めてたまるか。 「もう、付き合えることになっただけで嬉しくて舞い上がっちゃってるんです。一気にそんな幸せになっちゃったら、俺、死んじゃうよ、宍戸さん」 せっかく両想いになれたのに。 俺は一秒でも早く長太郎の身体を知りたい。今止められる意味が分かんねえ。 そう頭では思っているのに、俺の手はいつのまにか長太郎に解かれていた。 長太郎は俺をぎゅうっと抱きしめると、背中をゆっくり撫で始めた。 「お酒飲んだままうやむやにしちゃうのも嫌です。それにこれからいっぱいできるんですよ?俺、きっと鬱陶しがられるくらい宍戸さんのこと求めそう」 頬を撫でて、髪の感触を確かめる長い指。 何度も何度もそうされて、額に口づけが落ちると、長太郎は俺を抱き寄せて持ち上げた。 ベットへ沈み込む身体が、ふわりと布団に包まれる。 「それに、今しなくても、俺の心も身体も全部、もう宍戸さんのものです」 「…お前、ひっでえな…」 そんなふうに言われると、悔しいけどもう諦めるしかないだろうが。 「あー、俺が我慢するのこれで最後だと思って。ね?」 「…長太郎」 「はい」 「明日は?」 長太郎は一瞬びっくりした顔をする。 でもベットの下に座ると俺の手を握って嬉しそうに笑った。 「えっと、夜遅くまでバイト入ってるんです。ジロー先輩達に29日取られちゃったから」 「その後、待ってる」 「……宍戸さん、すごい積極的ですね」 「るせぇ。お前が女遊びしてる間も俺はずっと空しく一人だったんだよっ」 「…し、宍戸さん。うれしいんですけど、今日はもうあんまり可愛いこと言わないでください…」 「あ?」 長太郎は俯いた後、何度か首を振って溜息を吐く。 「じゃあ明日。寝ないでちゃんと待っててね、宍戸さん」 「お前こそ疲れたとか言うなよな」 「宍戸さんがキスしてくれたら、そんなの吹っ飛んじゃいますよ」 優しくて真剣な声でそう言うから、俺は安心して目を閉じた。 もう空しい気持ちも悲しい気持ちも消えて、幸せな誕生日になった…し、明日も長太郎と会えるしな。 床なんかに座ってないで隣で寝ろよって言いたいのに、頭を撫でる長太郎の手が心地良くて、俺はそのまま眠ってしまった。 End. (Happy Birthday! Ryoh shishido) 前 次 Text | Top |