◇あべみは短編 | ナノ

きみの心に触れさせて

「うん、わかった!あべくん以外 と、タワムれる時は、オレ、あったかいかっこ、する!」

あれから、泣き出しそうな三橋を引っ張って体育館裏まで連れてった。
それで、あんまり無防備になるなってことと、俺は怒ったんじゃなくて妬いたんだってことを説明した……のだが。

「いや、うん…そういうことじゃなくて…」
「えっ、ち 違うのっ?」
「違う」

そう言えば三橋は青ざめて、困ったような顔をした。

「あ、あべくん、ごめん…っ。オレ、やっぱり、タワムれる って言葉、かんちがい…してるみたいだ…」
「え?」

いやいや、そうじゃなくて"露出するな"ってのと"あったかいかっこ"のとこで噛み合ってないんだ、三橋!

「三橋あのなぁ」
「あ、あべくっ」
「あ?」
「あの、タワムれる っていうのは、だ、大好きな人とくっついたりして、安心する…こと?」
「うーん…やや近い、かな」
「ち、近い?オレ、そのとき、大好きな人が寒がったりしないように、あったかいかっこ、するんだよ ね…?」

離れた。
と思ったが、三橋が一生懸命にしゃべっている姿にキュンときたからつい頷いた。
しかも、大好きな人って、大好きな人って…!

「大好きな人って…」
「あっ、あべくんは、オレの…大好きな、ひ、人…」

俺はものすごく感激した。
なのに三橋が"言ってよかったのかな"みたいな顔をする。
だからちょっと腹が立ったけど、うれしさに勝るはずもなく、肯定するように手を握った。

「オレ、あべくん、が、風邪引くの、やだ…から……あっ!は、浜ちゃんが ひ、引くのもイヤだ、けど!えっと、あべくんが 一番、やだから。だから、あったかいかっこ、するよ」
「…本当か?」
「うん!あっ…でも、浜ちゃんも風邪 引かないように、オレが引く…」
「バカッ!おまえが風邪引いたら誰が球投げんだよ!つかもう浜田の話やめろ」
「うおっ!ご、ごめ…そっか…」

うぅ…と呻き、縮こまる三橋を、俺はやっぱり堪えられずに抱きしめた。

結局話が微妙に通じてないけれど、まぁいいか。
抱き寄せた三橋の心音がこんなに早くなっちまうのは、俺だけにできることみたいだから。




End.





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