◇あべみは短編 | ナノ

あまくおちるその二文字


「……レン、」

「えっ」


よく分からないけど、突然 だった。あべくんが「レン」って言った。

う、う…うれし、い!!

だって「レン」って、オレの名前だっ。
いつも「三橋」って呼ぶのに、なんでかな。
し、下の名前は、ドキドキしちゃうな。フヒ。

あ、ほ、ほかに「レン」って言葉、ないよね?
レン……レンコンは、ちがうよ、ね…?
急にそんな話しない、よね!

あれ?じ、じゃあ…いきなりオレのこと、名前で呼んだりもしない か…な……。

うわぁ。オレ、勝手に喜んで、バカみたい。恥ずかしい。
あべくん、もしかして、これから続き 言うかな?
そうしたら、今度は意味が、わかるかも…。わ、笑われないよーに、大人しく待ってよ…。

「…おい」
「ハ、ハイ!」

気がつくと、あべくんの怒った顔が目の前にきてて。

「"レン"って呼んでんだけど」
「うぇっ!?」

うわぁ…!
やっぱり、オレのことだったのか…!!
びっくりしたけど、うれしい!

「…んだよ、その反応…」
「あ、オ、オレも!あべくんの名前 知ってる!あべ…たかや、く…!!」


あべくんは、しばらく黙った後「覚えとけよ」と言った。
頷いたら納得したみたいで、でも今日はぎゅっ じゃなくて、頭なでなでするだけだった。
すごくドキドキしたのに、ちょっとさみしい、な。




End.





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