いじわる、大好き あべくんとキス。 もう十回以上して、何回目かわかんなくなってきたし、数えてたらシアワセ気分に集中できないから、やめた。 「三橋って、眉毛も睫毛も茶色っぽいな」 くちびるが離れたばかりで、まだ心がほっこりしてるオレに、あべくんがそう呟いた。 「…え?」 「キスの時、いっつも思ってたんだけどさ」 キスの時……? キスする時は、目を閉じてるから、見えない よね? 「いや俺は開けてるよ。たまに」 「ええっ…!そ、んなの、恥ずかしい…よ…!」 だって、キスしてる時、うれしくて、気持ちくて、シアワセで……変な顔してるかもしれない、のに。 「ヒドイ。あべくん」 「はぁ?お前ほど可愛がってる奴いねーぞ」 「…え?」 あんなに恥ずかしくてショックだったのに、つい涙をひっこめてしまう、ゲンキンなオレ。 「そうだな…べったりしすぎって怒られるなら分かるよ。やめらんないけど」 ニカッと歯を見せて笑うあべくん。 オレより少し大きな手が、頭をわしわし撫でてくる。ああ、キスもうれしいけど、頭撫でられるのもシアワセな気持ち、だ…。 目がとろーん、て…なる……。 「お。その顔、好き」 だらしない顔してそうでハッとした。 だけど、あべくんがキスしてきて、動揺も反論も止められちゃった。 うう。シアワ、セ。 いま、思いきって目を開ければ、キスしてる時のあべくんの顔が見れる、よね。 でも、くちびるだけでこんなシアワセになっちゃうんだ。 すごくすごく近くにある、あべくんの顔なんて見たら…。 まだ しばらく、あべくんのくちびるだけで、我慢しよ。 End. 前 次 Text | Top |