◇あべみは短編 | ナノ

いじわる、大好き

あべくんとキス。
もう十回以上して、何回目かわかんなくなってきたし、数えてたらシアワセ気分に集中できないから、やめた。

「三橋って、眉毛も睫毛も茶色っぽいな」

くちびるが離れたばかりで、まだ心がほっこりしてるオレに、あべくんがそう呟いた。

「…え?」
「キスの時、いっつも思ってたんだけどさ」

キスの時……?

キスする時は、目を閉じてるから、見えない よね?

「いや俺は開けてるよ。たまに」
「ええっ…!そ、んなの、恥ずかしい…よ…!」

だって、キスしてる時、うれしくて、気持ちくて、シアワセで……変な顔してるかもしれない、のに。

「ヒドイ。あべくん」
「はぁ?お前ほど可愛がってる奴いねーぞ」
「…え?」

あんなに恥ずかしくてショックだったのに、つい涙をひっこめてしまう、ゲンキンなオレ。

「そうだな…べったりしすぎって怒られるなら分かるよ。やめらんないけど」

ニカッと歯を見せて笑うあべくん。
オレより少し大きな手が、頭をわしわし撫でてくる。ああ、キスもうれしいけど、頭撫でられるのもシアワセな気持ち、だ…。

目がとろーん、て…なる……。

「お。その顔、好き」

だらしない顔してそうでハッとした。
だけど、あべくんがキスしてきて、動揺も反論も止められちゃった。
うう。シアワ、セ。

いま、思いきって目を開ければ、キスしてる時のあべくんの顔が見れる、よね。

でも、くちびるだけでこんなシアワセになっちゃうんだ。
すごくすごく近くにある、あべくんの顔なんて見たら…。


まだ しばらく、あべくんのくちびるだけで、我慢しよ。




End.





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