◇あべみは短編 | ナノ

きよしこの夜

三橋がイルミネーション見に行こうって誘ってくれた。
その時のアイツときたら相変わらずびくびくしてるし、何度も声を詰まらせるし、ひどいもんで。本当に俺と行きたいのかよってすっげー疑いまくった。

けど、当日の待ち合わせ場所で俺を見つけた三橋がへらりと緩んだ顔したから、ようやく100%喜べたんだ。

「あの、ね」
「ん?」
「い、イルミ ネーション…一人でも、観れる、よ」
「……はあ?」

コイツはまた何を言い出したんだ。
三橋からの誘いで、デートできたんだ…せっかく三橋の愛を感じたのに、どういうことだ。
やっぱりあれか。ビビりながら無理して誘ってくれたってオチか。

「でも オレ、きれいだけど、さみしいかなって。あべくんいないと、つまんない かなって。……さ、寒いのに 誘って、ごめん…ね」

俯いていた三橋はマフラーに口元まで埋めながら、視線だけちらりとこちらに向けて、もとから下がり気味の眉を更に下げた。
途端に胸が温かみを持ち出す。

「謝んな、バーカ」
「うお」

栗色の髪をくしゃくしゃ混ぜて、俺は先を歩き出す。

「ま、待って、あべく、」

三橋が追い付く頃には、頬のほてりも治まっているだろうか。
それとも、寒さのせいだと言えば、鈍くて可愛い恋人は騙されてくれるかもしれない。




End.





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