03/09:卒業。 後に氷帝学園中等部史上最大規模で盛り上がったと語り継がれるほどの卒業式が、終了した。校門前は人で溢れかえっており、ことテニス部某部長の周りが凄まじい。女生徒を中心に在校生の人だかりができている。 樺地がどうすればいいのか分からず困った顔をしている。助けに行くべきか、しかしそれは邪魔なのか。 俺も宍戸さんのところへ行きたい…! あれから一切会っていない。 まだ卒業おめでとうと言っていないし、お祝いの花束も渡していない。でも、今は友達と話してる……んだけど、そうやって待っていたらさっきみたいに女の子に先を越されちゃうし………ああ! 「鳳」 「わ!な、に?」 背後から肩を叩かれびくびくする俺を無視して日吉は携帯を開く。 「メール見たか?これから跡部先輩の家で卒業記念パーティーがあるらしいぞ。正午までに出欠を知らせろと書いてある…が、最後に絶対来いと書いてある」 「え、見てなかった。急だね」 「あの人らはいつもそうだ」 日吉はそう吐き捨て、ムスッとする。 跡部先輩に返信しようと携帯を開いたら――あれ?メール受信、2件。跡部先輩と…もう一つは、宍戸さんだ。 「…か……」 「どうした?」 「…いや。……そうだ、パーティーって帰り遅くなるよね。日吉も寮に外泊届提出するだろ?」 「いつになるか分からねぇからな。不本意だがそうする」 「俺もそうしようっと。えへへ」 「…。気が済むまで返してくれないに決まってるからな、泊めてもらうさ。それぐらいしてもらわないと付き合ってられない」 「それぐらいって。不器用なだけで優しい人だよ。きっと、泊めるつもりで誘ってるんだから」 「まぁ、この文面からするにそうだろう。けどそれならそうときちんと書いてくれなきゃ困るぜ。慣れたからいいが」 「そうだよね。慣れたからいいんだよね。これは“察しろ”ってことなんだ。仲良いんだから、俺達の仲なんだから分かるだろ?気付けよ、っていうのだよね!…そういうのいいよな」 「迷惑な話だぜ」 「日本人の奥ゆかしい文化だよね、悟るっていうコミュニケーション方法」 「…跡部先輩は純日本人じゃねぇだろ」 「そうだね」 「て…ってきとうなこと言うんじゃねえっ。つかなぁ、さっきから何ふにゃけた顔してんだ。気色悪い」 「失礼な。もともとこんな顔だよ。日吉も笑ってみなよ」 「うるせー、変に絡むなっ。おまえなんか宍戸先輩がいなくなって情緒不安定になれ!」 「もうそんなのは乗り越えたよ」 「…なんなんだ、おまえ……あろうことか宍戸先輩の卒業式で泣かないで笑ってるし…」 『跡部んち行くだろ?そのあと家来い』だって。 思わず花束を抱きしめてくしゃくしゃにしちゃうところだった。 おめでとうって言ったら、どんな顔してくれるかな。 前日 翌日 ちょ誕企画 | Text | Top |