02/25:強引。 風呂から上がった宍戸さんは、俺の横に座った。 「今日は早く寝るかな。明日中に荷造り進めとかねぇと…」 タオルでぐしゃぐしゃに髪を拭く宍戸さん。 良い匂いのする髪と赤らんだ頬、目の前に曝された足。 触りたい。 「宍戸さん」 「ん?」 何も言わずにキスすると、不意打ちに驚きつつも温かい唇が控え目に答えてくれた。 頭が熱くなる。腰を強く引き寄せて舌を絡ませると、手首を掴んで押し倒した。当然、宍戸さんから抵抗が返ってくる。 「痛っ。ちょっと…長太郎、待て。……やだって」 あれから読書は進んでいない。読もうとすると宍戸さんがそれとなく阻んでくる。 それはうれしい。でも俺が本を読むのをやめて構ってあげると、自分がわがままを言ってることを急に自覚し出して素っ気なくなってしまう。 宍戸さんが人に弱みを見せたくないひとなのは知ってる。 けれど四六時中そばにいてなおかつこれほど近しい関係なのに、一向に素直になってくれないのは寂しいし、理不尽な思いがこみ上げる。 だったら、嫌がられてもいいから俺の勝手にしたい。 もう時間がないんだよ。 「今日は宍戸さんの分だから」 「…は?」 「昨日は俺のために思い出作ってくれたでしょう?…だから今日は宍戸さんの分」 真下の、見開いて揺れる瞳。 文句の飛び出しそうな唇はすぐに塞いで、痛がってた手首も痕がつくまで放してあげられなかった。 どこまでなら許されているのか、こんな時に分からないなんて。 前日 翌日 ちょ誕企画 | Text | Top |