02/17:まつげ。 朝ごはんを食べに行くちょっと前の出来事。 「ねぇ宍戸さん。ちゃんと顔洗いました?」 「…なんだよ。汚ねぇって言いたいのか」 「違うよ。…ちょっといい?」 「なんだ?」 「いいから目閉じて。そしたら教えてあげます」 宍戸さんは訝しむような顔をしたけれど、それでもまぶたを伏せてくれる。 俺はそっと屈んで、柳の葉のような眉の下、つややかな黒い縁取りに口づけた。 「…なにしてんだコラ」 「うつ伏せで寝たでしょう?」 「は?」 「今キスしたところに寝癖付いてます。…なんかね、女の子がビューラーで上げたみたいになってる」 姉さんがしてたようにまつげを上げる仕草をして笑いかけると、宍戸さんは「ビュー…?」と言いながら左目を押さえた。 「…もっかい顔洗って来る」 「はーい」 前から思ってたけど、宍戸さんって実はまつげが長い。 黒くてまっすぐで、きれいに生えているそのまつげ。 それは、濡らしたまま瞳を閉じれば明白なこと。 …朝からそんなことに思い馳せてしまった。 前日 翌日 ちょ誕企画 | Text | Top |