◆中学生日記 | ナノ

02/17:まつげ。


朝ごはんを食べに行くちょっと前の出来事。

「ねぇ宍戸さん。ちゃんと顔洗いました?」
「…なんだよ。汚ねぇって言いたいのか」
「違うよ。…ちょっといい?」
「なんだ?」
「いいから目閉じて。そしたら教えてあげます」

宍戸さんは訝しむような顔をしたけれど、それでもまぶたを伏せてくれる。
俺はそっと屈んで、柳の葉のような眉の下、つややかな黒い縁取りに口づけた。

「…なにしてんだコラ」
「うつ伏せで寝たでしょう?」
「は?」
「今キスしたところに寝癖付いてます。…なんかね、女の子がビューラーで上げたみたいになってる」

姉さんがしてたようにまつげを上げる仕草をして笑いかけると、宍戸さんは「ビュー…?」と言いながら左目を押さえた。

「…もっかい顔洗って来る」
「はーい」


前から思ってたけど、宍戸さんって実はまつげが長い。

黒くてまっすぐで、きれいに生えているそのまつげ。
それは、濡らしたまま瞳を閉じれば明白なこと。

…朝からそんなことに思い馳せてしまった。


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