◆中学生日記 | ナノ

02/13:寝てる。


バレンタインイブの今夜、同室の恋人にちょっと淡い期待をしていたけれど。

俺はベットのはしごに足を掛けて上段のベットを覗いた。
…宍戸さん…ね、寝てる…。

うん。宍戸さんは恋人の行事とかどうでもいい人だよね。知ってました。でも、バレンタインはそれだけじゃないでしょ?
俺の誕生日っすよ…!

それじゃなくたって明日は女の子から(だけじゃなくて男からも)引っ張りダコになる宍戸さんをみなきゃならないのに、こんな仕打ちって…。
はぁ、と溜息をつこうとした瞬間、ピピピッというアラーム音。

「ん…」

もぞもぞと身じろぎをして、目を覚ます宍戸さん。なんだか、卵からかえるヒナを見守ってる気分になった。

「おはようございます」
「おはよ…つか、夜じゃん」

掠れた声でそう返した宍戸さんは、俺の頭をくしゃくしゃ掴みながら少しボーっとした後、上体を起こした。「俺もおまえんとこに寝るわ」って。

「だってもうすぐお前の誕生日だし」
「だからアラーム?」
「おう。なんか眠かったから一回寝ておこうかと思ってよ。明日はいろいろ疲れるからさ」
「そうだね。宍戸さん、たくさんの子に呼び出されて…」
「違うって」
「…え?」
「おまえが女の子に追いかけ回されんだろ。それ見んの、ムカついて疲れるから」
「…やきもち?」
「やきもち」
「うわ…どうしよう。すごいうれしい」
「アホ。まだ喜ぶの早いっつの。誕生日きてねぇし、プレゼントもやってないし。それに…」

そこで宍戸さんは言い淀む。何を言おうとしているか分かっている俺は笑顔で「それに?」と、ちょっと意地悪く聞き返してみた。
すると宍戸さんは耳だけわずかに赤くして、けれどかっこつけて言った。

「…おまえのこと、ベットで甘やかしてやんねぇとな」
「!!そっその言い方かわいい宍戸さん!」

恥ずかしいのに頑張ってくれた…!



そして、おまけにもう一つ。

「…仕方ねぇから、『カワイイ』も3回までなら許してやる」


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