P O O L S I D E 8
部室棟まで戻ってきた宍戸は、生徒の声と、聞き覚えのある水飛沫の音を聞く。
裏を覗けば、プールが昨日と違って大勢の水泳部が部活をしており活気に満ち溢れていた。
宍戸は昨日ここで溺れたことを思い出す。ふとあの銀髪の少年が頭を過ぎった。
あいつもこの中にいるだろうか。
風邪を引かなかったことだけでも、報告しようか。
金網の向こうを眺めれば奥の方に男子水泳部員が見えた。
「やだ宍戸。なーに覗いてんのよ。エッチ」
キョロキョロしていると、同じクラスの女子が話しかけてきた。
水着姿で、腰に手を当てて。
大勢の女子部員がプールの手前で練習に励んでいた。
「…え、あっ。ち、違うっての!そうじゃねえよ!」
「こっちじーっと睨みつけてたじゃない」
「別にお前らを見てたわけじゃねーよ!」
二人で言い合いをしていると数人の女子が宍戸に気がつき、なにか小声で話し始めた。
宍戸は大慌てで否定したが、同級生の眉間のしわは深くなるばかりだった。
「怪しい……。テニス部は前科もあるのよ。先週も忍足君が来たんだからね」
「マジで違うって!その…人探ししてんだよ!」
「人探し?」
レギュラー落ちした揚句、痴漢呼ばわりまでされたらたまったものではない。
宍戸は昨日の少年のことを少しだけ話した。
「……そんな子いたかなぁ。今年ね、テニス部ほどじゃないけどうちも新入部員が多いから、男子のことはよく知らないんだ」
「そっか…」
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