P O O L S I D E 7
翌日、部活に出席した宍戸を待ち受けていたのは、冷たい、バカにしたような衆人環視だった。
ヒソヒソと噂話も耳を掠める中、宍戸はそれらをレギュラーだった頃のやっかみと同じようにすべて無視した。
今の宍戸にはそれを跳ね返せるような自信の源はなかったが、無表情を装うのと、卑下しようとする相手を睨みつけてやることには慣れていた。
怖いに決まっている。
でも、気にしたら負けだ。
宍戸は一般部員と混じり、グラウンドの隅で練習を始めた。
今日の部活は出た。
明日からはどうする?
きちんと整備されたコートを使って、こちらとは比べ物にならないような厳しい練習をする正レギュラーの、元仲間達の姿。
どうすればあそこに戻れる?
(やっぱり実力を示さないといけないよな。まだ俺が使えるってことを見せてやらねえと)
宍戸はラリーの続くコートから、その脇のベンチへと視線を動かした。
そこには部長で常にシングルス1に君臨する跡部が腕を組み、部員の練習を見つめる姿があった。
『分かっているだろうな』
青い瞳と同じように冷たい声。
分かってたまるか。
どれだけ努力してレギュラーを手にしたと思っているんだ。
どれだけ誇りを持って、その場所を大切にしてきたと思っているんだ。
自分の甘さも分かるが、たった一度の敗北ですべて失うなんて、納得できるわけがない。
「こんな練習じゃ、ダメだ…」
宍戸は唇を噛みしめ立ち上がり、その場を離れた。
練習の輪から出ていく宍戸を気にする者など一人もおらず、皆、自分の練習や友人とのおしゃべりに夢中だった。
明日からは正レギュラーだったときと同じ、いや、それ以上の練習メニューを組もう。
一人で練習するんだ。
そして―――。
宍戸は湧きあがる歓声の中、コートでラリーを始めた跡部の姿を見つめた。
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