◆P O O L S I D E | ナノ


P O O L S I D E 5


目を覚ますと、視界いっぱい群青に侵食された空が広がっていた。
辺りの薄暗さに自分は死んで別世界に行ってしまったのかと一瞬慌てたが、そうではなかった。空は単に夕陽が沈んだというだけで、呼吸をして今一度辺りを見回せば、そこは宍戸が帰りに寄ったプールサイドだった。
枕代わりにタオルを頭に敷かれ、身体はベンチに横わっている。
宍戸の横にはさきほどの少年もいた。
あれほど不気味に思ったけれど、少年は近くで見てみると背格好も自分とあまり変わらず、顔つきから推測するに年も近いだろう普通の子どもだった。
宍戸が起きるのを待つようにコンクリートの床に体育座りをしてじっと座っている。
助けてくれたに違いない。
身体を起こそうとした宍戸は、突然走った足の痛みに声を上げた。

「あっ。気がついた!」

次いで声を出そうと息を吸うと、思いきり咳き込んでしまう。

「大丈夫ですか?無理しないで。溺れた時かなり水を飲んでしまったみたいだから」

むせる宍戸の背中をさすりながら少年はそう説明する。
宍戸が落ち着くと、プールサイドの脇にある水飲み場へ走って行き、そこにあったプラスチックのコップに水を入れて戻ってくる。

「さぁどうぞ。落ち着くから」
「……わ、悪い」
「いいえ」

薬品の味がして気分が悪かった口内は水を飲むとすっきりして気分も落ち着くようだった。
ホッと息を吐いた宍戸の隣で、少年が「よかった…」と同じように肩を撫でおろす。

「息は戻ったんですけど、意識が戻らないから心配しました」
「……ごめん」
「氷帝のプールは、少し深いから」

仕方ないですよ、というふうに少年は笑う。
銀色の前髪が小さく揺れた。





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