P O O L S I D E 16
「たった一歳の差で。学校っていうのは残酷な世界ですよ」
「うん。おもしれえ」
宍戸はプールに浸けていた足を蹴り上げて、鳳に水飛沫をかけた。
「わぁっ!冷たっ」
「へへ、バーカ」
「一方的に水かけてバカとかないですよ!ヒドイです!」
でも、そういう反応されると楽しくなる…と言ったらまた火種になるか。
鳳は顔つきもまだあどけなく、おそらく異国の血が流れているであろう髪や肌の色も薄くて柔らかい。怒るとすぐ朱色になる頬も愛嬌と言えた。
それを観察するのが、なんというのか、飽きない原因なのかもしれない。
しかしあまりやると可哀想なので、宍戸は鳳の銀色の頭をぐしゃぐしゃ撫でて適当に収拾をつけた。
「ごめん。ごめんって」
顔を覗き込んで謝ると、鳳は即座に顔を背けてしまった。返事も来ない。
見た目に反して少し強情である。
「……もう少し真剣に…僕と向き合ってくれても、いいんじゃないですか……?」
「無理。特訓中で忙しいから」
そこまで冷たくしたつもりはなかったが、鳳は黙ってしまった。
瞬間、まるで他人の感情を肌で感じたような気がした。
悲しい、と。
「…鳳…」
静寂に、ざくざくと氷の砕かれる音が響く。
俺の買ってきたアイスに八つ当たりとは。この野郎。
一瞬「返事しろよ、てめえ!」と逆切れしそうになったが……それはお門違いだと気づく。
まいったなぁ。
そう思うが、どうしていいのか分からない。
近頃は分からないことだらけだ。
これまで自分が他人に思いやりを持たずに生きてきたことを、今さら反省しても遅いのだろうけど。
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